Yoko

アナザー プラネットのYokoのレビュー・感想・評価

アナザー プラネット(2011年製作の映画)
3.9
 17歳でマサチューセッツ工科大学に飛び級で合格した天才少女。ある日、運転中ふと見上げえた夜空には地球にどこか似ている青い星、まるで「第2の地球」と例えることが出来るような星を目にする…。

 SFをベースにした人間ドラマ。作り方としては『ガタカ』を意識している感じ?
 今作のシンボルとも言える「第2の地球」に込められているテーマは重層的で深みがあって、薄っぺらいSF作品では終わらなかったなというのが大きな感想。
90分程度の短い時間でスマートに過不足なく詰め込めている。
 画面のトーンも非常に美しく神秘的な雰囲気を催している。
特に、今作の大きなテーマを意識したような青色の絶望的美しさが映えており作風とベストマッチ。
劇中の時間を経るごとにこのトーンが微妙に和らいでいく様も、キャラクターの内面を描く情景描写のお手本の如く成功してる。
 そして何より、主演のブリット・マーリングの瞳が凄い。
彼女の青い瞳はまさに「第3の地球」であるかのよう。
美貌は勿論のこと、こんな綺麗な瞳を持っている人をよくぞキャスティングしてくれたと思います。

以下、結末について言及…。



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 ラスト、突如登場する”例の人物”については、こちらの服装と明らかに違い、ちょっと高級感のある黒いコート、ちょっとインテリチックで頭良さげなファッションと、劇中の「惑星間におけるシンクロ崩壊理論」の登場から察するに、「第2の地球」では交通事故は起こしておらず、MITに合格した頭脳を最大限に活用している科学者として成功しているのではないかというのが自分の推測です。
しかも、”例の人物”がこちらに歩み寄ってきてそのまま幕を閉じる訳ですが、科学者としての知的欲求や使命感、または科学者のみが知り得る「こちらの地球」に対する豊富な知識といったバックボーンなどを仮定してみると、”例の人物”が主人公を避けて消えることは考えづらく、こちらに歩み寄るのは必然だと思います。
科学者になることが出来ず、「第2の地球」についてはほとんど無知である主人公は、やはり突然の人物を前に戸惑ったまま何もアクション出来ない訳ですし。
 成功した自分と失敗した自分が邂逅することで生まれる新たなドラマはここでは語られませんが、失敗した自分が事故の被害者や職場の老人との交流を通して、罪を受け止め人間的に成長するという今作の一番大事なドラマは既に着地点を見ています。
二人が邂逅して生まれる新たなドラマが提供するのは悲劇かそれとも喜劇かどうかは分かるべくもありませんが、これ以上またドラマを作るのは無粋だと思うのでまぁこれでいいんじゃないかと思います。
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