TaiRa

ポゼッションのTaiRaのレビュー・感想・評価

ポゼッション(1981年製作の映画)
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劇場で観直したら思いの外オモシロ映画だった。こんなに全てが過剰だったのね。

カミさんに浮気されたら世界が滅びるという監督実体験映画。撮影も音楽も芝居も全てがフルMAXで楽しい。カメラの異様な落ち着きのなさ、ローアングルの徹底。ロッキンチェアで固まったままゆらゆらするサム・ニールとか顔をひん曲げて絶叫し続けるイザベル・アジャーニとか。キッチンでミキサー使いながらヒステリックな口喧嘩をし続ける場面が最高におっかない。何が何でも分かり合えない男女の絶望が東西に分断されたベルリンで展開され、やがて世界は崩壊するという元祖(?)セカイ系ラブストーリーとして素晴らしい。お互いの理想形を押し付け合う構造に見るイデオロギー対立とあらかじめ持ち合わせた虚構性。一方で男性中心社会において、「妻」が欲望を具現化させる寓話であり、それはある種の「恐怖」であると表現する。クライマックスで夢のようなアクション展開を繰り広げ、天国への階段で夫婦が愛を確かめ合うロマンチックさにズラウスキー本人の願望が滲んでいて切ない。ズラウスキーを捨てた奥さんは浮気相手のニューエイジおじさんと幸せに暮らしたそうです。
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