青二歳

ダライ・ラマの青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

ダライ・ラマ(1997年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

チベット人を虐殺し弾圧を続ける中国共産党政府から"チベット史"ドキュメンタリー。貴重な中共にしか撮れないドキュメントフィルム。ついでにイギリスの植民地戦略を正面から批判、アメリカの介入を人道的理由じゃなく反共政策に位置付けるという結構攻めた構成。

中共の主張するポイント押さえてます。
【神性否定】ダライ・ラマなんて人間に過ぎないでしょという宗教否定が第一。さらにダライ・ラマ14世の生まれた青海省はチベット地方政府(チベット自治区≠チベット文化圏/民族分布地域であることは語られない)から離れてた土地で、漢文化の影響下にあったから14世は子供の頃チベットの言葉なんか喋れなかったし!とお怒りです。

【統治権否定】そもそも歴代ダライ・ラマのチベット統治の法的根拠が冊封だと主張したい。統治の根拠は清朝の皇帝が与えたものだと。やっぱり中華思想。ここは共産党に限らず中国のダメな所だと思う…
そして14世を青海省からラサに届けるために、チベット地方政府はお金を払って中共の中央政府軍に連れてきてもらったらしい。また14世の御即位については国民党政府がお墨付き出していると。国民党にもケチつけたい所でしょうが、ここでは国民党についてはサラッとで、とにかく統治権の根拠が冊封体制の文脈で語りたいんだと思います。

【国際社会の責任追及】
ああだこうだ口を出す欧米諸国への反論ターン。この辺は面白い。真っ向からイギリス批判ww。これは言いたいこと分かる。よく作ってあるなあ。白人のよくやる手口"分割統治"暴露大会。いいぞいいぞ〜もっと言ったれ〜( •ૅω•` )あとシムラ条約についてアメリカ批判も。

【毛沢東の偉大さ・チベット解放】
1949年以降からは毛沢東主席万歳ターン。偉大なる毛沢東だからこその十七条協定だと。ついでに蒋介石や清朝政府もズタボロに批判(あながち外れてはいないような気もするけど)。
チベットの民衆は中世的な封建社会からの解放を喜んで歓迎したと、被支配階級の生活が如何に悲惨だったかを延々と語ります。まずチベットには3階級9カーストがあり、チベット政府は慣習法と宗教法を混在させた前近代的な法制度であった。ポタラ宮の地下には監獄があり刑罰は残忍で、食事は与えられず足枷をつけられたまま物乞いをしていた。しかし人民解放軍によって物乞いに仕事が与えられた…
さらにチベットでは荘園の領主のもと、農奴は口をきく家畜と思われ、生殺与奪権を握られ、領主は首都ラサで妻とともに享楽にふけっていたと。荘園の管理者である執事もピンハネしていた。しかし人民解放軍によって農奴は解放され人間的な生活を手にした。
続けて、チベット社会はゲルグ派の一握りの僧侶がその富を搾取していた(100万人のうち12万人が僧侶だったらしい。確かにすごい人数。映像あり。)が、人民解放軍によってその封建制度は打ち破られ、発電所が作られ、学校が作られたと。
そんな感じで延々とインカ帝国滅ぼしたスペインみたいな言い分が続き、まとめは「人民が最も喜んだことは1954年の人民大会にダライ・ラマが出席することである」と。ダライ・ラマと毛沢東の会見…これも朝貢みたいな位置付けで語るんですよね〜
中国の闇は共産主義というより中華思想なのかな…と感じました。いいドキュメントフィルムです。支持しませんが。
青二歳

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