旧ユーゴの村に生活するジプシーの青年ベルハンの転落の人生を描く。
ある日、悪事をして金を稼ぐアーメドが村に帰ってくる。アーメドが足の悪いベルハンの妹をイタリアの病院につれていってくれるというので、その言葉につられて一緒にイタリアへ行くベルハン。
しかし、妹とは引き離され、次第にベルハンはアーメドに従い、悪事に手を染めるようになっていく。そして、裏切り、復讐…。
恋人との結婚と出産、不思議な魔力を持つ祖母の温かさ、妹との再会など、さまざまなドラマが散りばめられている。
あんなに素朴だったベルハンが、悪の世界に染まっていく姿は切ないけど、独特のファンタジーな映像とユーモアとジプシー音楽によって、悲劇をただの悲劇として見せていない。
いつものワチャワチャ感はやや少なめで、ラストも今まで観た作品のように多幸感はない。でも、硬貨と段ボールで脈々と受け継ぐジプシーの「血」を感じさせる結末にシビれた。
本物のジプシーたちを多数起用していて、顔や佇まいが渋い。演技では出せない本物感。
クストリッツァ作品でたびたび出てくる婚礼のシーン。特にウェディングドレスを象徴的に使っているのは今作からなのかな？ジプシーは社会で虐げられていてファミリーで移動するから、家族の絆が強い。婚礼の場で音楽の仕事も得ている。だから婚礼は家族の象徴として重要なんだと思う。
河に浮かぶ灯籠流しのような炎と案山子、強風に舞う砂埃の映像が美しかった。
今作では七面鳥が活躍。懐いているように見えるのがすごいな。
