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囚われの女のsのレビュー・感想・評価

囚われの女(1968年製作の映画)
4.0
60年代らしいサイケデリックでビビッドなアート作品やフリーセックスを背景にした、クルーゾーによる現代アートないしポップカルチャーへの痛烈なアンチテーゼ。卑猥なスライド写真を見せられ帰宅した後、鏡の前でネックレスを外し自分の手に巻き付け手錠をかけられているようなポーズを取るショットが仄めかす主従関係のはじまりの予兆。"服従は甘美な自己放棄である"。
「愛がなければ不潔な遊びよ」と、歪んだ性癖を持つ青年の本心と過去を暴き愛の概念を真っ向からぶつけるシーン、投げやりに放つとどめのセリフ「だからあなたは変態なのよ」が優秀。
大荒れの海と豪雨、暴風で制御不能な窓の扉のショットでアケルマンの『囚われの女』のラストを回想。ベースは同じくプルーストの『失われた時を求めて』。ゆっくりと時間をかけて破滅へと向かうラストの中で魘されて見る夢の映像はポップアートそのもの。過激なまでに誇張されたバッキバキの演出にクルーゾーの揺るぎない反骨心を感じる。ギャスパー・ノエ的な赤と青の四角いパターンの暴力的な明滅は、冒頭で好きな色を尋ねられた時の夫の目を映す視点の信号切り替えのショットと同じ色で恐怖。初クルーゾーなのに物凄い遺作から観てしまった。
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