TaiRa

もののけ姫のTaiRaのレビュー・感想・評価

もののけ姫(1997年製作の映画)
5.0
初めて劇場で観た。思い返すと生まれて初めて触れた「複雑な映画」がこれだった。

子供時代にVHS買って100回くらい観てるし、そのせいもあって成長してから観直す機会も少なかった。カット単位で覚えてるので。おそらくDVD以降の画質で観直してないと思う。それで今回、デジタルのリバイバル上映。これが思いのほか記憶の中の『もののけ姫』と変わらない。VHSとDCPじゃ随分違う筈だが。記憶の中でデジタルリマスターでもしたのか。あの壮大さも美しさもブラウン管越しに正確に受け取っていた。これは面白いなと。やれ4Kだ8Kだと言っているが、観客ってのはどんな粗悪な状態でもちゃんと映画を受け取れるんですよ。

ただ、内容に関しては別の話。子供ながらに正確に受け取っていたとも言えるし、全然分かっていなかったとも言える。もちろんこの映画に登場する人間たちの背景をまだ理解出来ていなかったし、その特殊性も分かっていなかった。アシタカが村を去って行く事がどういう意味を持つか、今回やっと理解した気がする。なぜアシタカが森に受け入れられるか、エボシ御前の抱える矛盾と葛藤なども複雑な背景があるのが分かる。よくもまぁ、こんな映画が国民的なヒット作になったなと。一般的な国民から排除された者たちの物語なのに。それでも子供時代に夢中になったのは、やはりその複雑さが魅力だったのだろうと思う。勧善懲悪とは無縁の、誰もが正しさと愚かさを抱える映画を観たのは生まれて初めてだった。世界は暴力に満ちている事も、宮崎駿に教わった気がする。たとえ難解でも子供はすんなり受け入れる。そもそも子供にとっては世界の全てが理解不能で難解なのだから。理解出来るものを観て安心したいなんてのは、怠惰な感性の大人だけでしょ。この映画が大ヒットしたのは、はっきり言えば鈴木敏夫の仕事によるもので、内容への理解や共感、支持とは関係ないでしょうね。それは以降の宮崎作品にも共通しますが。
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