【現代の死】
2006年頃ユーロスペースで鑑賞。ミヒャエル・ハネケのデビュー作で現代社会のどん詰まった様相を淡々と記録した「終末の風景」がある。異色作品。
元ネタはパゾリーニの『テオレマ』か? 中産階級の死滅を予兆する「第七の大陸」の映像が断片的に挿入されるアイデアが心憎い。
「生のための行為」が、いつしか「行為のための生」に転換され、完全に生きる意味を見失った家族の心中日記とも取れる内容で、ここでは無い何処かへと向かっていく現代人を冷徹に描写した悪夢的作品となっている。これにはびっくり。
ゆっくりとじわじわ死んでいく中流家庭の描写が、ナチスの拷問処刑や大量殺戮にも似た後味の悪さでありハネケ監督の現代社会に対する憤りを感じることも可能。
基本的にミヒャエル・ハネケは社会正義の監督だと思っているので、ここ最近の悪趣味系とは対極に位置するアカデミックな雰囲気がある。園子温とは比較にもならない。
何かと現代思想系とウマが合いそうな監督じゃないかなぁ? アガンベンとか、ジジェクとか。