煙草と甘いコーヒー

心のカルテの煙草と甘いコーヒーのレビュー・感想・評価

心のカルテ(2017年製作の映画)
3.0
主人公の役作りに、ため息がもれた

CGなのかわからないが、死ぬ手前の、生をギリギリに保てている状態の身体

それを見るのが痛々しく、摂食障害と闘う人たちの危うさが怖かった。

もつれにもつれた重度の悪循環。

そんな主人公:エレン役のリリー・コリンズの演技、お見事。

ただ、クライマックス手前から混乱してしまった。


▼以下、ネタバレあり▼

実母とのテントでの会話で、実母が「あなたが死にたい、と言ったら受け入れる」と言った時のエレンの顔がなんとも言えず良いのだが、その後の彼女の取った行動で、頭が混乱し始めた。

娘が自ら命を断つことを受け入れると実の母親から言われた娘は、母親のことをどう思ったのだろうか。

スピリチュアルな世界にハマって長い母親。我が子のエレンとは離婚を機に離れ離れになった様子。メンターと仰いでいるらしき人物からの助言で、娘に授乳の儀式を提案する母親。そんなことで、穴埋めできると思えてしまうって、、、それって、娘と正面から向き合うことを放棄し、娘を救うことを諦めたことを娘に告白したと同義なのではないだろうか。「もう争いたくないの」と母親から匙を投げつけられたエレンは、見捨てられたと思い、本能が反射的に「捨てないで!」とすがった、ということなのだろうか? このシーンの授乳をしている母子をトラックバックするロングショットは、娘の絶望ではなく、娘を捨てた母ですらすがらざるを得ないドン底を捉えているのだろうか?? どういうことなんだ、、、

その後、夜中の荒野をひとり黙々と歩くエレンだが、これは死ぬための最後の散歩なのか、ただただ体重を落とさずにはいられない強迫観念に駆られての散歩なのか、ここもわからない、、、

力尽き、倒れたエレンが、日中の太陽に照らされながら見る夢。

その中で彼女は、痩せこけ横たわる自分を見て、「あれは私なの?」とショックを受け、こんな末路は嫌だと目を覚まし、摂食障害を克服すべく、再び施設へと戻っていく。わけだが、この改心の仕方は、やはり唐突で安易に思えてしまう。テントの前までが良かった分、なおさらに、、、

そして映画の最後に登場するタイトル

TO THE BONE

骨まで/骨の髄まで

邦題は、心のカルテ

ここにも疑問が残る映画だった。