イチロヲ

地獄の逃避行のイチロヲのレビュー・感想・評価

地獄の逃避行(1973年製作の映画)
3.5
社会に適合することができない青年と厳格な父子家庭に喘いでいる少女が、束縛からの脱却を求めるうちに、殺人事件を引き起こしてしまう。生き抜くことに貪欲なカップルの逃走劇を描いている、アメリカン・ニューシネマ。

困ったことが起きたら、とりあえず銃を抜く。そして、相手が邪魔者だと察すると、有無を言わさず射撃する。「生き抜くためにはこうするしかない」と思い込んでいるカップルのハチャメチャ冒険譚。

暴力行為を含めて、行動を起こすのはすべて青年の役割。彼からすると「彼女に尽くしている」という解釈になってしまうところが面白い。だが、彼女を母親の代替にしているような感覚が得られないため、カップル像にパワー不足の感がある。

凄惨な人間模様をフォトジェニックな映像の中に落とし込むという、テレンス・マリックの作家性が活かされている。表面上では開放的なのだけど、内容は息が詰まるほど窮屈。このギャップに、アメリカン・ニューシネマの醍醐味が集約されている。
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