半兵衛

ゴッド・ギャンブラーの半兵衛のレビュー・感想・評価

ゴッド・ギャンブラー(1989年製作の映画)
3.6
賭神と呼ばれる勝ち続けるギャンブラー・コウのシリアスなドラマかと思い見ていたが、序盤こそそうだったもののチンピラが別の人物を陥れるために仕掛けた罠にコウが引っ掛かって大ケガをしてからだいぶ空気が変わってくる。

そこから主人公のコウが記憶をなくして子供っぽくなり、彼を助けたギャンブラー志望のチンピラたちとのコメディチックな青春ドラマになるという予想もしない超展開に。コウ演じるチョウ・ユンファのお間抜け演技やチンピラたちとの軽妙なやりとりの数々は楽しめるのだけれど、同時に自分は何を見ているのだろうという気分に。そして中盤からは改修中の建物のパイプ(竹!)を使っての逃走劇や銃撃戦まで強引に展開してお腹いっぱいの状態になる。終いにはチョウ・ユンファによる2丁拳銃というサービスシーンまで出てくるこの映画の監督による徹底的なサービス精神にある意味感服した。

でもこの映画の更に凄いのは後半30分でコウが記憶を取り戻すと、それまでのコメディドラマは何だったのかと思うくらいシリアスなギャンブルドラマに戻るところである。そして周到ないかさまを仕掛けた敵に挑む主人公→逆転のくだりはやや大味で漫画チック(小林旭の『黒い賭博師』にも近い)ではあるがスリリングで盛り上がる。一応チンピラの一人がコウのことを心配して彼のところへ向かうドラマがあるのだが、特に勝負の行方に関係ないのが潔い。

見終わったあと何でもありの物語に香港映画の濃厚なごった煮を味わった気分になった、そしてDVDの特典によると続編の伏線がいくつか張られているとのことでその作品を見たくなってくる。

あとアンディ・ラウが若くてびっくりする、特に最近の彼が出ている映画ばかり見ていると新鮮に思える。それからこの時期香港映画にいくつか出ていた西脇美智子の80年代らしいメイクも決まった艶やかな演技も見所。そしてなんと言ってもチョウ・ユンファの笑顔の素晴らしいこと、これを見れただけで満足した気分になれる。
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