Roe2

雲のむこう、約束の場所のRoe2のネタバレレビュー・内容・結末

雲のむこう、約束の場所(2004年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

最高でした。
牧歌的な世界の描写をしていた序盤。それでもあの子を救うんだ!の前振りとはわかっているものの、描写が丁寧で凄まじくノスタルジーに浸れる。この時点で1600円の価値はあった。
主人公が闇堕ちする中盤。あの子のいない世界がいかに空虚かをこれでもかと描写し、終盤の主人公の主張の根拠はバッチリ。学校という場で学生的日常を過ごす主人公と、研究所で、既に大人の世界で戦っている親友くんの対比もあり、とてもわかりやすい振りだったと思う。
さて終盤です。
セカイ系思想で動く主人公と、大人的視点に立って主人公と対立する親友。完全に予測通りの子供と大人の対比ですね〜と思っていたら、全てを受け入れるガチ大人が世界を救いつつあの子も救う案を持ってきやがった。これをご都合にみせない努力がしっかりなされていて、完全に子供の行動の責任はしっかり取りつつ子供には自由にやらせる"大人"の姿を見せられた。わざわざ親友くんにタバコまで吸わせて大人側であることを強調し、それは真の大人の姿では無いと謳うその裏切りが素晴らしかった。
さて、あの子を救う決断をしたところでサクッとハッピーエンド…にしないところがこの作品の凄いところで、女の子は自分の気持ちを伝えられずに本作を終える。好きだった時期の記憶が消えてるのでその後もしばらくは伝えられないだろうし、下手したら何も無く終わってしまうかもしれない。
記憶ぐらい気持ちや奇跡で維持させることも出来るような空気だったが、あえてそれをしないことで、これら一連の騒動の結末が奇跡では無く、各々の決断と行動によって勝ち取られたものである事を明らかに出来ている。
思い出の塔の爆破も相まって、子供時代からの決別、いわば大人への成長を思わせるラストだったと言える。

本作は大人が子供と対立してなく、あくまで子供の行動の責任を取り、その後をケアする存在として描かれていて、とてもかっこよかった。僕もそうありたい。
Roe2

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