酢

ピノキオの酢のレビュー・感想・評価

ピノキオ(1940年製作の映画)
3.5
「世界は怖いんだからね」と子どもに教えるのにこの映画はうってつけだけど、「世界は怖い」をあまりに魅力的に描いているという問題がある。具体的に挙げるとヴィランズがとにかく素晴らしい。まず山田康雄の正直ジョンは何故かキツネなのに加えて立ち振る舞いがエッチすぎて💯です。ストロンボリとコーチマンも怖いねえ。どこか人間社会にいそうな生々しさと、書き割りのように悪役に徹している凄みが両立していて、さながら悪夢のような存在感。教科書的な古風な道徳観が核にあるからこそ、この映画は妖しい毒々しさの愉悦に満ちている。

歪な細部も楽しいね。ゼペットじいさんの家で可愛いおもちゃ達が大合唱を繰り広げるシーンは想像の倍は長い。クジラの中からの脱出は水飛沫の描写に命懸けとる。ピノキオの溺死体の描き方、目を見張ったよ。
酢