藍多左乃介

八甲田山の藍多左乃介のレビュー・感想・評価

八甲田山(1977年製作の映画)
3.3
1977年公開。無謀な雪中行軍訓練による日本史上最悪の遭難事故を描く。高倉健、三国蓮太郎、緒形拳、北大路欣也など超豪華キャスト。

実際に冬の八甲田山で、しかも吹雪を待って撮影したらしい。当時のカメラでは吹雪の中、しかもフードを被っている役者の顔は誰だか判別がつかず、表情も分かりにくい。しかし、寒さに耐えながら声を張る彼らの様子には演技を越えたリアルを感じる。

判断を誤る上官という、軍隊の規律が悪しき面のみに出た状況に加え、悪くなる一方の天候、次々と倒れる仲間。誰も幸せにならない、救いのない話だが、高倉健演じる徳島隊の道案内をした若き日の秋吉久美子が唯一の癒しか。
天災に人災が重なる状況下、規律に苦しめられながらも、その規律に殉じる精神に彼らの意志と儚さを見る。

追記
YouTubeで春日太一が「陰謀史で読み解く八甲田山」としてこの事件に大胆かつ奇抜な推論を立てている。陰謀論と聞けばマユツバだけど、この事件には不可解な点が多いので興味深い。
藍多左乃介

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