似太郎

血を吸うカメラの似太郎のレビュー・感想・評価

血を吸うカメラ(1960年製作の映画)
4.0
あのヒッチコックの『サイコ』よりも一年早く制作された英国産ホラーの佳作。監督は巨匠マイケル・パウエル。

稀代のカメラ小僧でストーカーという設定の主人公が只ひたすら気持ち悪い。イギリスにはこういう精神を病んだ人が出てくるサスペンスが多い。ウィリアム・ワイラーの『コレクター』なんかもそう。

全体を通して本家ハリウッドとは異なる偏執狂的な映像美を堪能できる。そこはやはりマイケル・パウエル監督らしく外連味溢れるユニークな画面造形だった。

カメラに取り憑かれた青年マークの狂気染みた表情が真に迫っており凄味を感じる。彼は根っからの悪人というよりはどこか悲哀を感じさせるサイコパスで、ラストもやや物悲しい雰囲気。

一人の映画オタクの顛末記という意味では『フェイド・TO・ブラック』などにも通じる。この手のルサンチマンを描いた映画は分かりやすくて良いねえ。
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