垂直落下式サミング

プロムナイトの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

プロムナイト(2008年製作の映画)
3.1
オープニングの流れるような空中撮影がいい感じ。空撮すっきゃねん。まず上から見下ろした夕暮れ時の水面を駆け抜け、海辺の高台にまで徐々に高度をあげていって岬の灯台を飛び越すと、港町の入江にかかる橋をとらえて、その上を走行する一台の車を追いかけていく。ティーン好みするメロディックなロックナンバーにのせたオープニングシークエンスは、エクセレントなワンカットだ。あとは適当に。
オープニングの格好よさにくらべて本編はひたすらに凡庸。特定の人物を狙った変質的な犯罪者の襲撃を描いてはいるが、その誇大妄想や異常性格などの精神的な内面を物語に反映するにはいたっておらず、チャラチャラしてる順にフラグが立って順番に回収されてゆく、ありふれた刃物系スラッシャーではある。
冒頭で、人生を破綻させられるくらいの被害を受ける主人公。さらに、高校生活最良の思い出となるはずだったプロムの日に、また同じ犯人の襲撃をうけて惨劇が繰り返される。彼女の人生は悲惨の一言。特に、母親が殺害される瞬間をベッドの下に隠れて声を殺してみているしかなかった過去のフラッシュバックは、かなりショッキングな描写だ。むしろ、これだけのことを経験したにも関わらず、ものの数年で立ち直っちゃって、今じゃイケてる彼氏もいるし、たくさんの友達と変わらず良好な関係を続けられているのは、十代の少女らしからぬ鬼メンタルでたくましいと思う。
殺人方法も、ホラー演出も、徹頭徹尾こちらの予想を越えてはこないため、刺激を求めると物足りない。とりあえず無個性な脇役たちは死ぬしかないので、同級生が誰から殺られていくのか予想してベッティングする死に順ダービーで遊べば、最後まで飽きずに視聴は可能。