みんと

黒い十人の女のみんとのレビュー・感想・評価

黒い十人の女(1961年製作の映画)
4.1
面白かった!めちゃくちゃ惹き込まれた!

市川崑監督、初体験。
グラフィカルな構図、光と闇のコントラスト、これぞモダニスト崑の真骨頂…なるフレーズに惹かれて鑑賞、そして大きく納得。

ひとりの男に想いを寄せる10人の女たちが彼に殺意を抱いたことから巻き起こる騒動を、ブラックユーモアを散りばめながら描いたミステリー。

妻が居るにも関わらず9人の愛人を持つテレビ・プロデューサー風 松吉(船越英二)のイラッとするフワフワ感がいい。と言うか上手い。肝が据わってて強気な妻 山本富士子がいい。そして1番目の愛人、岸惠子の如何にも女優気質な感じもいい。

誰にも優しいは誰にも優しくないのよ…
案の定、妻と愛人達は結託して殺人を企てる訳だけど、十人十色 愛し方もそれぞれ違うものだからややこしい。とりわけ宮城まり子の想いの重さ、痛さ、執念深さには引いた。そして中村玉緒の切り替えの速さとちゃっかりさも面白い。

色んなタイプの女性が、風と言う一人の男に囚われ憎みつつも憎みきれず、いざ手放すとなると惜しい、もはや女の意地のぶつかり合い。愛では無くただ手に入れ勝ち誇りたいだけのようにも。

最終的に女性たちを物のように扱ってきた風が、逆に女たちから物のように扱われると言う それ見た事かな結末もなんだか哀れだなぁ。

常に冷静で抑揚の無くしれっと放つ山本富士子の強烈ワード達がめちゃくちゃツボ。

どなた、あーた?

あたくし、そーなぁんざんす…

そして、あれこれ想像させるラストシーンも上手いなぁ…

通して邦画とは思えないほどスタイリッシュでクール、とんでもなく映像センスを感じる作品だった。
みんと

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