ろ

愛と追憶の日々のろのレビュー・感想・評価

愛と追憶の日々(1983年製作の映画)
5.0

部屋着姿でベールをつけ、ミュージカルナンバーを口ずさみながら鏡の前を闊歩する。
結婚前夜のエマに、ちょっと話があるのと母オーロラは切り出す。
「あなたの結婚祝い、何にしようか迷ってるの。でも何も思い浮かばない。それで気づいたのよ。あなた、あんな男と結婚するべきじゃないわ。明日もし結婚すれば、あなたの人生をぶち壊す大失敗になる」
「私は明日結婚するの。反対なら参列しなくていいわ」

結婚式にも来ず、妊娠も喜ばない。それでもエマとオーロラは毎朝電話をする。
また引っ越すの?電話代がかかってしょうがないじゃないと愚痴をこぼしながら、朝食とともに娘の声を聞き、子どもたちの世話をしながら母親の噂話に耳を傾ける。お互いの話にうんざりすることもあれば、「それでそれで?」と前のめりになることも。
年齢を重ねるごとになんでも話し合える関係になっていくエマとオーロラ。しかしそんな日々も長くは続かなくて・・・

夫は浮気。支払いは滞り、夫婦の言い争う声は通りまで響いている。
「どうして玄関で待ってなかったの?答えて、トミー」
「恥ずかしいからだよ。あの家の人間だと思われたくない」
「10歳までは年に一度、憎まれ口を許してあげる」
涙でぐちゃぐちゃの次男テディに対して、病床の母を冷ややかに見つめるエマの長男トミー。
「母さんに愛してるって言わなかったことを悔やまないでね。母さんはあなたの気持ち、ちゃんとわかってるから」

「もう喧嘩したくないのよ」
「私たち、喧嘩したことある?」
「あなたには驚くわ。ずっと喧嘩してたじゃない」
「ママがそう思うだけでしょ。私に不満だから」
過去の栄光にすがってみたり、現実に対して言い訳をしてみたり取り繕ってみたり。自分自身の至らなさを持て余しながら、子どものようにいじけたり、また気を取り直して今できる精一杯をやってみたりする。
うれしすぎると怖くなるし、悲しみは一人じゃ背負いきれない。それでも続いていく人生を、私自身どう生きていきたいだろう。エマとオーロラの生き方を通してふと考えるエンドロールだった。


( ..)φ

シャーリーのかわいらしい甘い声に、ジャックニコルソンのダンディかつセクシーボイス、そしてデボラウィンガーのハスキーな怒鳴り声。とにかく役者陣の声が魅力的な映画だった。特に冒頭のエママーマンが歌うミュージカルナンバーをデボラウィンガーが熱唱するくだりがほんとに最高だった。

女性の誘い方がサイテーすぎるジャックニコルソンが「なんで俺っていつもこうなんだよ」と自分のひねくれにうんざりしながらとぼとぼ家に引き返すカットがある。
自分をよく見せようとして空回りするのも、そんな自分に呆れ、恥ずかしさからイラつくのも、めちゃめちゃ分かるな~と思いつつ大笑いした。
そしてそういうかっこ悪さこそ、この映画の魅力だと思った。
ろ