Frengers

愛と追憶の日々のFrengersのネタバレレビュー・内容・結末

愛と追憶の日々(1983年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

とにかくプロットが良い。本作に最も魅了されるのは、母と娘の立場が物語が進むに連れ反転していくこと。最終的には母がするはずのことを娘が、娘がするはずの事を母親が成してしまうという交錯が見事に描かれる。

 その一つの起点となるのは母と娘の男との逢瀬がそれぞれ描かれる中盤のクロスカッティング。二人の状況の共通点――車、電話、ベットを行き交いながら浮かび上がる対照性が素晴らしい。冒頭でまだ赤ちゃんだった頃の娘の泣き声で生きていることを確認する場面が後半では看取ることになるのも一つの対照がある。
序盤の母親が娘のベットに入り込むシーンも含め、実は娘の方が人間として成熟していた。強い前の世代をどうやって乗り越えるかという視点とは正反対という意味でもこの映画は貴重かも。

2回目の視聴(2017/5)。本作の大きなテーマはすれ違い。主役である女親子がそれぞれのデートに出かける場面は一つにつながっている。車で会い、電話を重ね、母親の場面で消えたライトを娘のほうでは点けるといった具合に。ここを境に親は愛や生きる喜びに溢れ、娘は生活に疲れ人生の終末へ。

 本作の感想に「主役の母娘が自己中すぎて微妙」というものを良く見かけるが、自己中であること=自分の一方的な投影でしかないこと、愛とはかけ離れたものであることを示す装置や性格として私は十分作品のなかで機能しているように思う。最後の母親の慟哭と反省が胸を打つのはその証左でもあると思うし、もう一つの重要な関係性である親が長男に示す愛情表現---「自分を愛するのと同じようにあなたを愛している」は自分本位ではないことの証明にもなっている。

 お涙頂戴ものと紹介される作品だが実際は非常に精巧。オーセンティックな人間ドラマとしてやはり素晴らしい。
Frengers

Frengers