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人間の境界のFrengersのネタバレレビュー・内容・結末

人間の境界(2023年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

飛行機の上から眺めた風景、窓ガラスに映る街並み等々、窓には時間が経過した幻視された歴史が映り、対照的に液晶には手の届かない人たちが映る皮肉。『大いなる幻影』を想起する、モノクロ、国境越しの断絶と音楽の繋がり(グローバリゼーションの結果でもあるラップ)はドキュメンタリータッチの手振れの生々しさによって揺り起こされる。政治家や権力者が姿を現すことがなく、止めどなく暴力の結果の尻ぬぐいを余儀なくされる人たちの中には、「敵」は存在しない。ただ自身の生活を守るために行動している市井の人々達として映され、本来結束するべき人達としてすべての登場人物が映画かれているように思えた。

映画としては幾つかショット不足だと感じた。冒頭の飛行機の着陸は、後半の足元のショットとの連動を考えるときっちり撮るべきではと思うし、それ以降の作劇も「現場で起こっている事」にカメラはフォーカスしていても、各登場人物の歴史はあまりハマっていない気がする。人物の立ち位置によるそれぞれの関係性の明示もあまりなく、顔のアップ多用+カット割りで表情に頼るのみ。森の中の祈祷シーンも体の動きがもっと映されてもよかったはず。

もっというとドラマで見たかったというのもある。断章形式の映画だから相性は良いだろうし、人物達の背景にもっと時間を割けるだろうから。しかし、ヨーロッパの伝統に倣うためにも恐らく映画でなくてはならなかったんだろうとも思い複雑。
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