オーソン・ウェルズ監督主演のフィルム・ノワール1作目。ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞作。
終戦直後のアメリカの小さな町。ナチス再興をもくろむ戦犯フランツ・キンドラ(オーソン・ウェルズ)は、チャールズという偽名を使い予備校教師として潜み、地元の判事の娘メアリー(ロレッタ・ヤング)と結婚することに。国連戦争犯罪委員会のエージェント、ウィルソン(エドワード・G・ロビンソン) は彼の正体に気付き、鋭い機転と洞察力で追いつめていく。。。
面白かった。シナリオにひねりはないが、冒頭から趣向を凝らした映像が続きサスペンス演出で楽しませてくれる。ウェルズとロビンソンがまさに正反対のキャラクターで対峙しているのもメリハリが効いて良かった。
塔での派手なクライマックスは、後の「黒魔術」(1949)でも繰り返される。個人的にもとても好みなパターン。ティム・バートン監督の「バットマン」(1989)、「シザーハンズ」(1990)でも本作のクライマックスを真似ていた。
戦争直後の1946年に悪役としてナチス残党を設定することに大衆向けのスピード感を感じる。ウェルズ作品の中では芸術性に乏しいかもしれないが、観やすくて単純に楽しめる傑作エンターテイメントだった。
※ハリウッド映画で初めてホロコーストのドキュメンタリー映像を使用した 。