ミシンそば

コレクションする女のミシンそばのレビュー・感想・評価

コレクションする女(1967年製作の映画)
3.8
御託に満ち溢れた、それでも瑞々しい60年代のロメール。
ロメールの代名詞的なジャンルである、イヤんヴァカンス映画の中の最初の一本なんでは?(「モード家の一夜」の一作前だった)

やや下衆めな美術関係職の男が、仕事3割ヴァカンス7割くらいの気持ちで、南仏への出張に出向いて、拠点の別荘で女と出逢い惹かれてゆくと言うのが乱暴なあらすじ。
特別美人と言うわけではないが、ファッションセンスが良く肢体も健康的で性にも奔放なエデ(今日観たDVDの字幕ではアイデ。役者の名前と同じで、本人役とするところもあるようだ)が、「コレクションする女」である。
最初主人公はこのエデを、明らかに取るに足らないものと見ているし、自尊心の高さとかも垣間見えるんだけど、エデの態度によってどんどん狂ったように夢中になってゆく。
ありきたりな表現で言うところのアリ地獄のようだし、一人の人間が堕ちてゆくまでとして観たら非常に滑稽で面白い。

主人公のモノローグがとにかく多くて、映像があるのに小説を読んでいるような眠気がすごくするが、一方でエデを映すアルメンダリスのキャメラは非常に変態的で、温度差が凄い。
製作当時の環境が結構な生兵法(結構無計画に製作開始した映画らしい)だったことも考えると、瑞々しさと見苦しさが無理なく同居しているようで楽しめた。