菩薩

男はつらいよ フーテンの寅の菩薩のレビュー・感想・評価

4.0
シリーズ三作目、マドンナ:新珠三千代。

今作の監督は森崎東、分かる人には分かると思うが流石の森崎節で兎に角のっけから騒々しい。そもそも寅さんのチェック柄のジャケットからしてうるさいのだが、どんちゃん騒ぎが多いし、リアクション一つとっても山田洋次監督作とは全く違うバイタリティを感じさせる。寅さんも啖呵を切ったり口上を述べたりと渡世人らしさを全面的に発揮、あとこの作品では寅さんはほとんど柴又には寄り付かないし、さくらの出番が少なめである。対照的に博は大活躍と言うか、寅さんを殴り飛ばし屈服させるシーンまであると言う…。二人が寅さんを見送る際にぎゅっと手を握り合うシーンがとても良かったりもする。

マドンナの新珠三千代演じるお志津さんは旅館の若女将、いやぁまぁこれがまた本当にお綺麗だなんのって、着物姿が超別嬪なのは勿論だが、いちいち所作が美しい、寅さんで無くとも、岡惚れして居着いてしまうのは分かる。お志津さんは後家さんでコブ付き、本来は旅館を継ぐべき弟が居るがこれがまぁ問題児、けどこの弟・信夫(河原崎健三)と、彼が恋する芸者の染子(香山美子)との間を寅さんが取り持つ下りが涙無しでは観られない。今作では前半と後半とで二組のカップルを幸せに導く活躍ぶりを発揮する寅さんであるが、当然己の恋の方は上手くいかず、あんなに想いを寄せたお志津さんは辛くも寅さんが嫌いなインテリ大学教授に持っていかれる始末。散々旅館に奉仕を尽くした挙句無残に振られる寅さん、亭主持つなら堅気をお持ち、とかくヤクザは苦労の種よと歌ってみせる姿が涙を誘う。

大晦日から年明け、ふとテレビに寅さんが映る。ちなみにこの時とらやのテレビは白黒、お志津の新居はカラーテレビである…。テレビの中で子供二人、いや三人と嘯いてみせる寅さん、思わず涙を堪えられないとらや一同、堅気の生活、何より所帯持ちへの憧れ、寅さんの隠しきれない思いが垣間見えるシーンであるが、彼の願いが叶う事は最後まで無いのである…。
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