イスラエルとパレスチナ、双方にとっての歴史的悲劇を再現する一方で、対テロ戦争の泥沼へと突入していくアメリカへの警告も示唆した、鮮烈の問題作
社会派の映画は、ある意味「問題作」であるからこそ、その存在に意味があるんじゃないだろうか
コミックの映画化はすぐに資金が集まって量産されるけど、こういう「大人の映画」を、資金に困らず自由に撮れる映画監督が、ハリウッドに一体何人いるだろうか、といつも思う(アメコミも好きやけどね♪)
家族のために「暗殺」を遂行する主人公は
国家の平和の為、正義の為に「テロとの戦い」を行うアメリカそのものだ
第一の暗殺
真っ白なミルクに、真っ赤な血が滲んでゆく・・・
そのミルクは、一瞬で白人を連想させる
その頗る象徴的な映像が、これから起こる全ての事を印象付けながら、「顔の見えない恐怖」が刻々と描かれる
夢の「マイホーム」
歴史の事実と、社会的なメッセージを込めた「硬い」映画であるけれど、実は、暗殺と爆破のアクション、そして、そういった映画的なイメージ描写に優れている、限界ギリギリのエンタメ性を含んでいるのが、この映画の特徴かもしれない
果たして成功するのか
きちんと爆破できるのか
暗殺チームとしての不安定さが緊張を投げかけ、日常生活にフッと湧き出る死の瞬間を、何度も何度も見せつけられる(あのボンドこと、ダニエル・クレイグがチームにいるにも関わらずですよw)
様々な言語
様々な人種
ヨーロッパ各地と中東を転々とするストーリー
その全てが、現代のアメリカへと集約されていく
行きつく所まで行きついた恐怖
セックスと殺害シーンがカットバックするラストシーンは、あまりに鮮烈で、あまりにグロテスクだ
それを、かろうじて正気に繋ぎ止めるのは
妻の「愛してる」の言葉
最後にきちんと、私たちの立場や意識を考えさせてくるのです・・・
CGによって再現された、世界貿易センタービルは、暴力と恐怖しか生まないテロ報復の象徴であり、「ニセモノ」のビルとしては、どの映画よりも最も存在感を放っているのでした