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ミュンヘンのSSDDのレビュー・感想・評価

ミュンヘン(2005年製作の映画)
3.5
■概要
1972年オリンピックに湧くミュンヘンにて、パレスチナ勢力のゲリラがイスラエル選手団の11人を人質に政治犯の解放を要求。人質と犯人は共に死亡する。
イスラエル諜報機関モサドは5名を選出し、報復として"黒い九月"に所属する首謀者11名の暗殺を命じる。

■感想(ネタバレなし)
スピルバーグが描く実話の諜報機関による報復劇。
実話ベースのため暗く重たい映画であり、選ばれた工作員が暗殺という業務に精通したものではなく、強い愛国者であるという以外それぞれの得意分野はあるものの、どうして進めることができたのか不思議なほどである。

諜報機関としてモサドがかなり未成熟であるゆえであると思われる点と、そもそも政府からは依頼が存在していないという建て付けのため支援は金銭的なもの以外はない状態で雇用もない。

爆弾工作以外は正直そこらへんの成人男性を捕まえて実行させたに近いため、ある意味スリリングでもあるが全編に渡って退屈さを感じてしまう部分がある。
暗殺なのでド派手なアクションなどあるわけでもなく、一般人を巻き込まず目的を達するのだから当たり前だ。たまに起きる制圧も正直ヤクザの抗争レベルの戦闘となっている。

史実として近代歴史のことを知るという点で優れた作品ではあるが、テロを中心とした狂気の世界を直視する作品になるため気軽に手を出せる作品ではなかった。












■感想(ネタバレあり)
報復は報復を呼び、渦中にいる男達が徐々に精神的に衰弱し、終えた後も死に囚われてしまう姿が痛々しい。

国のため、家族を想って皆、戦争や諜報活動など行うのだろうがおそらくこの手の稼業の才能は、"精神を麻痺させて罪悪感や疑問を感じずに続けることができるか"に集約されてしまう気がする。

いずれ戦争兵器は遠隔操作ばかりになり、操縦者のメンタルケアのために映像を加工して、罪悪感をなくすサイコパスのような世界になっていくのかもしれない。

本能に刻まれた殺人を禁忌とする感覚が存在するのに、いつまで経っても繰り返される戦争や報復の連鎖はなぜなのだろうか。
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