ペジオ

ミュンヘンのペジオのレビュー・感想・評価

ミュンヘン(2005年製作の映画)
4.9
「面白い殺しの描写がある、それも幾つも」
その事実の前には題材が持つ政治性などとるに足らない
時に滑稽に、時にスリリングに、時に叙情的に、時に即物的に、娯楽映画の巨匠スピルバーグがその卓越した演出力(観客の感情、生理を操る技術)を惜しげもなく「殺し」に注ぎ込んだ大傑作!

殺人シーンの羅列で成立するストーリーの必然性として「任務に従事するチーム」という設定も最適
チームを構成する個性的なキャラクター達の任務に対する各々の反応で表面上のテーマを掘り下げて出た結論「復讐が復讐を産む」が、「次に誰がどう死ぬのか?」という不謹慎なエンターテイメントに昇華される

歪なストーリーテリングは最早自明だろうが、その象徴として良く語られる「何故テロリストに殺された選手団の最期を、それを見ていないアブナーの回想として語っているのか?」も、任務でしかなかった国家の復讐にアブナー達の個人の復讐が伴った事で彼自身の殺意と溶け合っていく描写と解釈した

復讐の無意味さを悟ったアブナーの申し出とその返答を描いたラストは、最早殺人者は「人」ではないという国家からの、あるいは世界からの軽蔑を描いている様にも観られる
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