ショービズを仕切っている敏腕宣伝マンが、黒豹の脱走事件と連続婦女殺人事件の関連性を探っていく。コーネル・ウールリッチ著「黒いアリバイ」を原作に取っている、怪奇ミステリー。
見世物興行のために飼育されていた黒豹の脱走を起点にして、連続婦女殺人事件が発生。「本当に豹の仕業なのだろうか?」という部分にミステリーを持たせながら、事件のきっかけを生じさせた主人公の葛藤劇、豹に翻弄される大衆心理などが描かれていく。
物語を牽引する若いヒロインが登場したかと思いきや、いきなり被害者となり退場していく展開がショッキング。ジワジワと汗が浮き出てくるような演出が効果的に用いられており、独特の切迫感に覆い包まれる。
主人公の葛藤と自省の描写がイマイチ弱く、いつまでも飄々としているところが鼻につくが、ホラー演出の観点では最良の出来栄え。「胸のうちに潜んでいる猟奇性の表出」という、普遍的・根源的部分に触れているのもエクセレント。