製作ロジャー・コーマン。自殺を考えているポール・ダンサーの女と奇妙な吸血鬼との一夜のデートを、数名の小さな役を除けば、ほぼニ人芝居で描く。時と共に女は男の向こうに生への希望を見出し、男は女の向こうに救済としての死を見出す。この心のつながり、すれ違いを丁寧に描いて、なかなか良い映画だった。
男があの時代のハードロックを聞いてそうな長髪兄ちゃんで、部屋にはルームバイクが置いてあったりポルノビデオを見ていたりと、およそ吸血鬼らしからぬ様子なのだが、昼間外出できない限られた生活空間の中で一所懸命「普通」でありたいと情報を集めて暮らしているのが伝わり、滑稽の中から孤独と悲哀が滲み出す。どうやっても「普通」には生きれない夜の生活者二人の悲恋。女が時に思春期の少年にも感じられる不安定で孤独な吸血鬼に、離れ離れの息子を思わず重ね見てしまう心情も自然に理解できる。セックスでは満たされぬ二人の心の乾き、虚しさも、しっかり押さえてある。
コーマン関係では最初の『美女とエイリアン』や『Blood Bath』といった傑作と肩を並べる、とはいかないけれども、心に残る優れた吸血鬼映画だ。吸血鬼が夜の浜辺でビキニパンツ姿で日光浴のマネごとをする場面が可笑しくそして切なく、とても良い。

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