Eike

ダスク・オブ・ザ・デッドのEikeのレビュー・感想・評価

ダスク・オブ・ザ・デッド(2008年製作の映画)
3.5
原題は「Splinter:棘」。

この良く意味のわからない邦題やジャケット写真からはゾンビ集団に戦いを挑む主人公たちのサスペンス&アクションと言った印象を受けますが中身は全くと言っていいほど違います。
これぞ低予算ホラーの醍醐味といった雰囲気で楽しめます。

キャンプに出掛けたポーリーとセスのカップルは人気のない田舎道で謎のカップル、レイシ―&デニスと遭遇、彼等に車を乗っ取られただけでなく人質とされてしまいます。
銃をちらつかせる気性の荒いデニスは実は逃亡中の身、ポーリーとセスは不安を抱えながら同乗する羽目になるのですが日も暮れた山中で車が何かに衝突。
パンクしたタイヤを交換中に周囲に不穏な気配が満ちてきます。
どうにか人気のないガソリンスタンドにたどり着いた彼等はそこで真の脅威と遭遇するのだが…。
正体不明の敵に襲われコンビニに逃げ込んだ主人公たちは、命がけでこの「未知なる敵」との死闘を繰り広げることに・・・。

本作は正に「絵に描いたような」低予算B級ホラー映画です。
撮影はわずか20日間で劇中に出現するクリーチャーについてもほぼCGは使われておらずプラクティカルな手法で表現されているそうです。これも最近では珍しいですかね。

主な登場人物は4人のみ、舞台はどことも知れぬ、通る車とてない田舎道のガソリンスタンドと併設されたコンビニ限定。
盛り込まれているアイデアや描写には過去の作品の焼き直しやバリエーションも目につきます。
しかし、それでいて予想以上に楽しめる作品になっているのは脚本・演出・演技・特殊効果といった各要素が上手く噛み合っているからでしょうね。

B級ホラーらしいシニカルさを含んだユーモアも見てとれますが、安っぽいパロディにするような愚は犯しておらず、観ていて白けさせられることはありません。
基本は完全にシリアスなホラーであり、その点には迷いがありません。
中盤以降は夜のコンビニを舞台とした「密室劇」の趣もあり、それぞれの登場人物を演じる役者の技量もきっちりと生かされていて、ドラマとしてもちゃんと見られるものになっているのが中々に頼もしい。

低予算の作品ではありますがショックシーンや見せ場は過不足なく盛り込まれています。
謎の生命体が操る死体の不気味な描写や「棘」の攻撃を受けたデニスの片腕が…のシーンは秀逸。
「遊星からの物体X」や「死霊のはらわた」を元ネタとしながらも、謎の生命体のエグイ姿形やショックシーンも効果を上げております。

きわめて限定された設定による制約の中にアイデアを注ぎ込んで見せ場を作り、ちゃんと楽しめるホラーを作り上げている辺りには久しぶりにB級ホラーの心意気(?)を感じました。
制約が大きくても、予算が無くてもちゃんと面白い映画は作れる。
そんな好例と言える天晴な「低予算B級ホラー映画」です。
Eike

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