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Loop Track(原題)のEikeのレビュー・感想・評価

Loop Track(原題)(2023年製作の映画)
3.0
イアン(Thomas Sainsbury、脚本・監督も)は私生活上の問題に疲弊し、気持ちの整理をつけるべくシーズン終了間際の森林地帯での4日間のソロ・トレイルハイキングに出かけます。
とにかく人との接触を避けたかった彼ですが、その途上でニッキーという男性と出会い、押しの強い彼に半ば負ける形で同行することに。
そして山小屋でハネムーン中のオースティンとモニカというカップルとも出会って渋々ながら翌日、共に次の小屋を目指します。
その道すがらイアンはふと誰かの視線を感じ、背後に目を凝らすのですがそこには木々の影が揺れるばかり。
しかしその何物かの気配が執拗に、そして着実に近づいて来ているように感じたイアンの神経は更にすり減って行きます。
そして他のキャンパーたちへの疑心暗鬼が募った彼は次第に追い詰められていくのだが…。

NZ産の低予算B級ホラー/サスペンスだが、結構楽しんで見てしまった。
一番の要因は本作が非常に基本に忠実な造りである点。
舞台はニュージーランドの原生林が広がる広大な森林地帯。
そこに作られたトレッキングコースは日本の山岳縦走とはかなり異なる森林コース。
その森の植生がかなり異なっていてジャングルと広葉樹林のハイブリッドの様で日中でも薄暗い雰囲気があってサスペンススリラーの舞台としてはうってつけ。

主人公が何か個人的に大きな傷/問題を抱えて焦燥している気配がある点もキャラクター設定としてはありがちですが、その背景を説明しないアプローチに不満を感じるか映画として深味を与えていると見るか。
その点で意見は分かれるかもしれないがラストを見ればこの主人公の設定に作り手側が付けた意味は明らかで、それもあって志が感じられて悪くないと感じました。

パラノイア気味になった主人公の言動に振り回される他の登場人物たちとの関係もそれが延々と繰り返されると見ていて煩わしくもなるのですが本作ではサイコホラーの要素を盛り込むなど工夫があり、先読みしにくくしてある点など努力が伺えるだけでもマシだと感じました。

事の真相はかなり引っ張ってから明らかにされますがその時点迄で主人公の人となりやその追い詰められた状況はかなり念入りに提示済みであることから白けるようなことにはならずに済んでいると思います。
その意味で低予算のジャンル作としては及第点でしょう。

ニュージーランドの作品はオーストラリア産と同様にもちろんアメリカ映画の影響は強く受けているものの丁寧な(丁寧過ぎる?)人物描写やスタイル優先にしないアプローチなどからヨーロッパ映画の気配も感じられます。
その為、趣味性の強いドラマ仕立てのジャンル作を輩出しており、気になるところであります。

※本作の肝はニュージー・ランドにはオオカミや熊、それどころか蛇と言った危険生物はいないという点ですね。
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