夕陽をバックにした青文字のオープニングクレジットにストリングス。
それがあまりにも美しくて、いやが上でも期待をさせる。
お、労働者と機動隊の武力衝突が始まるか!
と思ったら、みんな歌い出して、ちょいズッコケ。
そうか、これはミュージカルなのか。
「シェルブールの雨傘」よ、もう一度!とジャック・ドゥミ監督が望んだ一作だった。
音楽は80年代を感じさせるがハイセンス。
悲劇的な内容に反して、心地よい曲調。
意外と古臭くなく、ずっと聴いていられる。
シックな色彩センスもかなりのもの。
人物の配置に合わせて、歌声を左右に振っているのはやや不満。
ブラウン管テレビの上にアンテナがついてるのは懐かしい。
セリフは全て歌。
主役の女性は、ほぼずっと全裸にコート一枚しか羽織らないで歩き回る露出狂(笑)
全くハッピーではない結末。
内容は全然異なるが空気感からして、レオス・カラックス監督が「アネット」を撮る前に本作を観てそうだと、ふと思った。
生きてゆくため、つましい給料を手にするため、そして愛を貫き、満たされるためには、人は嫌でも闘わなくてはなりません。
愛や思想のために命を捧げる人だっています。
情熱的な人たちです。
私は、この映画で、不条理なまでに激しい情熱を描きたかったのです。
by ジャック・ドゥミ監督