レインウォッチャー

トロメオ&ジュリエットのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

トロメオ&ジュリエット(1996年製作の映画)
3.5
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ完結の余波がじんわりと地球を覆っている今日この頃ではあるけれど、ジェームズ・ガン監督のオリジンはこんなところにある。

トロマ時代の悪ふざけ映画、タイトル通りロミジュリの現代版。
参加できなかった文化祭の余韻を拗らせたまま大人になってしまった風、妄想アイデアと手作り感が溢れるグロと節操のないエロ、ヒネたユーモアが詰め込まれている。そのくせ、格闘やカーアクションが意外と本気だったりするから謎だ。
まあ何にせよ、このとき一体誰が、将来ディズニーと仕事する(ついでにけんかする)男になると予想していただろうか。

前半はただ露悪的なノリばかり並べられるようで退屈に思えたのだけれど、いざトロメオとジュリエットが出会ってからはエモーションが追いついてきて、全体のテンポもドライブしていく。
ただのB級の出オチパロディというだけではなく、シェイクスピアの原典に対して「俺は納得いかねーぜ!」という意志が確かに幾分あったのではなかろうか。

中でも、ジュリエットを束縛し政略結婚に利用する支配的な父親、このヴィラン像は『ガーディアンズ〜』シリーズでも繰り返し描かれているものだ。

ガモーラ/ネビュラ/ロナンに対するサノス、
ピーターに対するエゴ、
ロケットに対するハイエボリューショナリー。

そして、『ザ・スーサイド・スクワッド』ではアマンダ・ウォラーがこのポジションにあたるわけで、ついに彼女の向こうには「アメリカ」の姿が透けて見えることが示されるのだ。(もちろん忘れちゃいけないドラマ『ピースメイカー』は、もっと露骨というかダイレクト)

個人の自由意志を無視し、都合よくコントロールしようとする存在こそがガン監督の考える「最悪」であり、それはこのときから変わっていないのだろう。

ゆえにきっと、今後のDCでの展開においても見逃せないキーワードになりそうな気がしている。
まだまだ青い今作では「心に従い全てを捨ててもいい」というメッセージが投げっぱなされるけれど、そんな根幹のパンクスピリットを受け継いだスーパーマンやワンダーウーマンなんて果たしてどうなるんだろう。うーん、世界はまだまだおもしろそうだね。

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さすがに『ガーディアンズ〜』シリーズみたいに華やかな大ネタ使いはできなくとも、選曲のセンスは変わらず良い。
荒々しいインディーのロック/パンクがエモく彩る中、ひときわ目立つ輝きはなんとSuperchunk!