Jeffrey

むかしむかしのJeffreyのレビュー・感想・評価

むかしむかし(1922年製作の映画)
3.5
‪「むかしむかし」

‪冒頭、昔々のイリア王国。
我儘な王女、外国の貴族、求婚、王宮へ来た王子。森を彷徨い、不思議な人物との出会い、やかんを手にする。真の愛情を知る妃、縛り首。今、5幕からなる王子らの求婚が描かれる…

本作はカール・テオドア・ドライヤーが1922年に監督した唯一のおとぎ話映画で、本作はスウェーデンとドイツで1本ずつ映画を監督したドライヤーが故国のデンマークに戻って映画輸入業者のS.マッセンの"最もデンマークらしい映画を作って欲しい"と言う要望に応える形で、作家H.ドラックマンが1880年代に書いたお伽話「むかしむかし」を映画化したのが本作である。

どうやらアンデルセンの童話に出てくる「豚飼いの王子」と言う物語に類似している様だが、そちらを見たことがないため何とも言えない。

本作は意外に愛国主義的要素があって結婚式のシークエンス等は個人的には好きな場面である。

それと古くからある民話も素晴らしい。

対局する森の中の小屋の貧困的な生活と環境を映し出した映像と煌びやかで華麗な王宮の場面の美しさとのコントラストがあまりにも違くて圧倒される。

このような美的映画を堪能できるのは当時からは非常に好まれていたとは思うが、この時代に今から100年前近くの作品を見てもそう感じるのは如何に本作が凄いかを実感できる。

さて、物語はむかしむかし、イリア王国という所に、超がつく程の我儘な王女が暮らしていましたとさ。

外の世界から貴族がこの我儘だが美しい王女を妃にすべく、日頃から求婚に訪れる。だが、彼女の好みの者はいない…軈て国王も王女の我儘に疲れ果てるが、ある時にデンマークの王子が我儘王女の美貌の噂を聞いて、求婚の為にイリア王国の王宮を訪れる。

しかし王子も彼女をモノに出来無い…。 

ショックをうけた王子は森を彷徨う。すると不思議な人物が現れ王子はこの人物から不思議な"やかん"を貰う。

乞食に変装した王子はこの"やかん"を持って王女の所に行き"やかん"をあげる代わりに今夜一晩王女の寝室で過ごすという条件を貫き通す…。

そして次第に真の愛情とは何かに気づく王女を描く…と簡単に説明するとこんな感じで、取分け、この時代の監督は凄まじい作品を世に放っていた。ドライヤーがこの作品を出すのであれば、ムルナウやラングも同等に素晴らしい作品を出していた。

本当の意味で価値ある戦いだった。

この作品とりあえず象徴的に映るのがロココ調の雰囲気なのだが、これってフランスのロココ様式を導入しているような感覚を得るのだが、貴族の風俗画が作品に投影される展開などは中々の見ごたえがある。

やはりこの作品を見るにあたって美術史と歴史も勉強していきたいと思った。

職業俳優を使わない彼のスタンスは本作にも表れている。

また声を発さない画面作りの中で、演じる役者の芝居も素晴らしいし、演劇的な芝居も見ごたえの1つである。

もっとも優美的な演出が印象を残すのだが…。‬

余談だが、本作のセットや衣装やロケ撮影を考えるとかなりの製作金額がいったと思われる。

それともともと60分近くのプリントしか見つからなかったらしくて、それがトータル70分以上の作品になっている分、ラストに多くのスチール写真や新たに中間字幕を加えて尺を伸ばしたのかなと感じ取れるが、実際のところはよくわからない…多分きっとそうであろう。‬

‪まだ、未見の方はお勧めする。映像が美しく華麗で、風光明美なモノクロームが最高だ。‬
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