【トマト嫌いにも勧めたい史上最低の映画】
ジョン・デ・ベロ監督のZ級映画として悪評名高いホラーコメディ映画。
アメリカで巨大化し自我を持った人食いトマトと人間の戦いを描く。
〈あらすじ〉
アメリカのとある町で女性の変死体が発見される。なぜか彼女の遺体の周りにはトマトジュースがこぼれていた。やがて、トマトが人間を襲うというありえない事件が各地で起こり始め、捜査官のメイスン・ディクスンは、報道官のジム・リチャードと共に捜査にあたる。その頃、政府の極秘会議が開かれていた。実は政府が極秘に開発していた巨大トマトが突然変異を起こし、人々を襲い始めたのだった。銃や除草剤が効かない凶暴トマトに対応すべく、これまた極秘開発されていた、半アンドロイド人間のブルースが送り込まれる。しかし、予算が足りずに片足しかアンドロイド化されていなかったブルースは、使い物にならなかった。そこで政府は、最後の切り札として4人の特殊技能を持った人間を送り込む。しかし、彼らも凶悪トマトの前では歯が立たず。そんな中、トマトに関する極秘情報を手に入れたゴシップ記者のロワスは、メイスンに取材を申し込む。一方、ジムは凶悪トマトの弱点を発見する。それは全米ヒットチャート1位の「思春期の恋」という歌だった。果たして人類は人食いトマトに打ち勝つことはできるのだろうか?
〈所感〉
ハチャメチャな脚本とチープな撮影技術には舌を巻いた。ファンが多いのも頷ける。表紙のような人食いトマトが登場するのかと思いきや、運動会の大玉転がしのような赤い玉が緩やかに転がってくるだけで、残酷に殺されるシーンも無いので笑ってしまう。チェンソーマンのオープニングでオマージュされた激狭会議室が見れたのが何よりの収穫だった。あと、序盤で唐突に流れる飛行機事故の映像は、撮影中に偶然遭遇し、カメラに収めた本物の事故シーンということで驚き。途中で、作品の内容に関係なく突然現れるスポンサーの家具屋の広告テロップは自由すぎないか。ラストのヘッドフォンで「思春期の恋」攻撃を防ぐトマトに対して、楽譜を見せて撃退するのが最高のフィナーレ。
人生でこの映画を見る時間は全く必要ないし、この映画を見るくらいなら他の有意義な時間に充てた方が良いだろう。しかし、同時にこの映画を見通して楽しめる余裕がある人は心にも相当豊かなものがあるのだろう。それを誇ってよいし、自分の感性を信じてよい。完璧な映画が多すぎる昨今、脚本も撮影もこれだけ自由でいいんだ。そうやって我々の当たり前の映画という規定のタガを外してくれるとんでもない良作。愛を込めて個人的な最低評価4.0を捧げる。