レク

ザ・バニシング-消失-のレクのレビュー・感想・評価

ザ・バニシング-消失-(1988年製作の映画)
4.8
入念に練られた計画、偶然が齎す必然。
一は全、全は一。
散りばめられた伏線がひとつの結末へ収束していく心地良さと日常の中に炙り出される恐怖の絶妙なバランス。
正常と異常の境界線の立証実験、好奇心に駆られ踏み込んではいけない一線を超えた先には狂気の世界が広がっている。

善と悪の二元論では語れない重なり合う是非曲直。
偶然と必然の共存、すぐ傍にある日常の特異点。
超越論的な予知とも取れる暗示、信じ難い真相。
踏み込んではいけない一線で踏みとどまる自制心は"当然"の判断、それに抗える異様なまでの"好奇心"の強さ。
まさに『好奇心は猫を殺す』と『シュレーディンガーの猫』の思考実験そのもの。

視覚的な描写に頼ならない機微の描き方。
これらの細かな演出のスマートさとひとつひとつが圧倒的説得力を持つ深み。
とんでもない傑作を観た。
レク

レク