Shelby

サンシャイン・クリーニングのShelbyのレビュー・感想・評価

3.0
「リトル・ミス・サンシャイン」スタッフが贈るこれまた家族の絆を描いた物語。
エイミー・アダムス×エミリー・ブラントの共演と何とも豪華に見えたのだが、どこか物足りない。イマイチ落とし所を見失ったようにフワッとした着地点で物語を終える。良かった点も勿論あるけれど良作とまでは言えない歯痒さ。一言で言えば、惜しい。

あらすじはと言うと、学生時代ではアイドルだったローズ(エイミー・アダムス)はハウスクリーニングの仕事を持つシングルマザー。しかも学生時代付き合っていた既婚者の元恋人と不倫中。
学校で何度も問題行動を起こしてしまう息子は、ついに退学処分に。一方妹のノラはどの仕事をしても続かず父が暮らす実家に住むパラサイトシングル。そんなふたりが、稼げる仕事として目をつけたのが〝事故現場の清掃員〟
順調かのように思えた清掃業だったが、そう上手くは行かず...というもの。負け犬人生のなかを必死に藻掻いて生きる人々を描く。

どの登場人物もダメダメ感が強すぎて見ていて息苦しくなりそうだった。
這い上がって欲しいのにどうしたって現状打破には程遠い。おまけに女同士の見栄の張り合いの場で見返してやろうと清掃業の説明をするが、周りの反応は薄くこれまた虚しく映る。
必死に自分を鼓舞する言葉を言い聞かせ続けるローズ。ただ、不倫相手がモーテルに来なかった日に、今までの自分を肯定する言葉とは違ってポロリと出た〝私は負け犬〟という言葉。
認めてしまった瞬間出たローズの自嘲的な笑いに不覚にもじんわり泣けてきた。

この映画で1番印象的だったのは、息子やローズが仕事で使っているバンの中にあった無線を使って疑問や思いを吐露する場面。
ローズの亡き母への思い。死という概念に対する純粋な息子の疑問。誰が聞いている訳でもないけれど、何処かの誰かに届いているのでは?
そんな誰かの聞き役として役割を果たす無線のシーンは素敵だった。

ただ、家族の絆というには描写が弱く、母親との繋がりを姉妹揃ってえらく引きずっていたが、そうなった過去も、根拠も見当たらない。
随分昔に亡くした母を思って泣けるほど思い出があったようにも見えず、不自然さが目立つ。

土筆のように踏まれても踏まれても這い上がるタフネスな生命力をもつ家族たち。どん底の中でも未来を見据えるラストでした。
Shelby

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