まぬままおま

鏡の中にある如くのまぬままおまのレビュー・感想・評価

鏡の中にある如く(1961年製作の映画)
4.0
イングマール・ベルイマン監督作品。

“神の沈黙”三部作の第一作。

作家のダビットと姉のカリン、弟のミーナス、カリンの夫で医師のマーチンが孤島の別荘でヴァカンスをする。4人は仲睦まじいが、それは表面的で、孤独が息づいている。

カリンは精神病を患っているのだが、マーチンは治すことができず、ただ愛の言葉を口ずさむことしかできない。セックスが存在しない二人の関係は、精神的愛ではなく、無である。ダビットはと言うと彼女を思いやる前に、書き物の題材として扱う。しかも作家ゆえか、彼は子の側にはいない。それがカリンやミーナスの孤独を助長する。
ミーナスは17歳だから性愛に興味津々だ。彼の欲望は肥大し倒錯して、カリンとの禁忌な関係に向かってしまう。

神は存在するのか。神はカリンの精神病の鏡像ーさらに蜘蛛としてーにしか現れず、現実で空から舞い降りるのは彼女を病院へ連れ去るヘリである。この無神論は、ベルイマンの生い立ちを反映させた作家性と言えるだろう。
では神無しで愛は存在するのか。それは「信じること」だと、ダビットは言う。ミーナスはここで父と心を通じ合わしたが、私はまだ分からない。その信じる仕方が。