鏡の中にある如くの作品情報・感想・評価

「鏡の中にある如く」に投稿された感想・評価

このレビューはネタバレを含みます

[神がいないかのような世界]

 開かれた扉から、神なのか悪魔なのか、カーリン(ハリエット・アンデルセン)の前に現れる所がかなりの迫力。病院から迎えに来たヘリが、神の居る天へ連れて行くとも言えるし、そのヘリが蜘蛛の様な悪魔にも見える。

 また、カーリンの統合失調症が命令して、弟のミーヌス(ラルス・パスガルド)を誘って近親相姦になる、そして、父親のダビッド(グンナール・ビョルンストランド)は娘のカーリンの病気を、小説の題材に利用しようとする残酷さ。これが、まさに神など居ない世界なのだろう。
  
 しかし、カーリンは現実より病院の世界の方が落ち着くし、父のダビッドと弟のミーヌスはやっと和解して安堵のうちに幕を閉じる。一応のケリはついてほっとする。(2018.11.10)
精神的な病に罹患している女とその女の父と弟と旦那を取り巻く物語の映画である。物語のみを抽出すると何にも無いと言える。抽象的な映画である。ただ何か深遠なものを感じた事は確かである。おそらく画の美しさがそれに影響している。不思議な映画であった。
狂気と聖性のボーダー、愛に潜む権力、名声と利己心、親子の距離と、短い時間の中で複数テーマをきっちり絡ませる。この辺りの脚本の鋭さとクローズアップの鋭さがシンクロしてるところがベルイマンの真骨頂なのかも。海辺ロケーションと肌を切るシーンは『夏の遊び』『ペルソナ』でも繰り返される主題。ボートとヘリコプターの対比も気になる。

ハリエット・アンデションって美しいのか醜いのかとてもギリギリな時があるのだけど、そんなところが何故か好きだったりする。
女と男3人と海と部屋だけで、
混沌を作り上げてしまう。

汗と水と風とささやき、木の軋む音、ヘリコプターの音、

不安の記録映像。
ろ

ろの感想・評価

4.8


いまは鏡のなかにあるようにおぼろげだが、やがて時が来れば、それが見えてくる。


退院したばかりのわたしは夫とともに小さな島にやってきました。
弟と、珍しく父も一緒です。
しばらくすると、だれかの声が聴こえてきました。
どうやら屋根裏部屋から、わたしに話しかけているようです・・・


娘の観察日記をつけることしかできない父。
寄り添いたいが、戸惑うばかりの弟。
医学を頼り、なんとか妻の苦しみを和らげようと試みる夫。
「愛してる」のことばは空を彷徨い、降りしきる雨に溶けてゆく。


病が囁く幻聴に悩まされ、神に救いを求めるカーリン。
現実とまぼろし。二つの世界を行ったり来たりしながら、身を裂くようなできごとを味わっていきます。

迎えにきたヘリコプターの騒音のなか、響き渡る叫び声。
「わたしが知る神は、こんな姿じゃない!」


鎮静剤では消すことのできない恐怖と苦しみ。
彼女の葛藤・罪悪感・もどかしさが押し寄せてくるようでした。



「優しい愛、卑しい愛、哀しい愛、美しい愛・・・そのすべてが神なんだよ。」

「じゃあ姉さんにとって、僕たちの愛は神だったのかな。」
私たちはいま、鏡の中にある如く、朧げに見ている。
神の不在がテーマだが、逆説的に神の実存を語ろうとしている。


画が、音が、美しすぎる。カリーンに翻弄され、常に不安だ。
uzwuzw

uzwuzwの感想・評価

4.8
美しすぎる、、、美意識の結晶。どの瞬間を切り取っても額装して飾って眺めたいくらい本当に画が綺麗。冷静にみたら不自然な仕草があってもそれすら全部綺麗。音の少なさも心地良い。ゆえにストーリーが頭に入ってこないレベル、なんだけどそこをグッと堪えてセリフを追うとそれぞれの心情に心を握りしめられる。。これこそ何回でも観たい映画。ベルイマン作品沢山観たくなった。
冒頭のカットにやられた!
狂気は誰にもある
男と女 欲望と愛の違い
父と子 姉と弟 家族の境界線
神の気まぐれ それとも試練
それは 鏡の中にある如く
dita

ditaの感想・評価

4.5
@第七藝術劇場 ~ベルイマン生誕100年映画祭~  

「いつまでも残るものは信仰と希望と愛です」注:但し幸せになるとは限りませんという話なのかな。沈黙する神を誰に置き換えているかの解釈によって見解が分かれると思う。わたしはとあるカットを見て父がそうなんじゃないかと。

冒頭の食事シーンの途中で父が部屋に戻って泣いている時に、窓から射し込む光の逆光で父の身体が柱と重なる影が十字架の縦、横に伸ばした腕のラインが十字架の横に見えて、これはキリストの暗示なのかなと思った。そう考えるとラストの弟の台詞に合点がいくなぁと。
沈黙する神と会話が出来たという喜びと、ベルイマンの父に対する思いが重なって見えて、わたしはあのラストは好き。偉い人の考察をいくつか読んでもそんなことは書いてないから違うんやろうけど。

どうやったらこんな構図でこんな陰影のこんなカットが撮れるのというくらい美しいシーンがたくさんあって、心の中でほわぁーってずっと思っていたけど、前に観た別の作品でも思った父役の人が井上順にしか見えない問題に悩まされて困った。どうにかして井上順を追い出したい(順に罪はない
m

mの感想・評価

4.0
何かにすがって生きているから見失う。結局自分を救えるのは自分しかいない。

自分の中から見える世界のすべてを愛せばいい。愛される(すがる)のではなく、愛せばいい。それはすなわち、自分が自分の世界の神になればいい。自分の世界は誰にも崩せない。

他者や神の存在は、自分の世界を築く過程にあればいいのだ。

(大前提として自分の世界とは無論、美しく、極めて善でなければならない。)
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