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17歳の肖像のEDDIEのレビュー・感想・評価

17歳の肖像(2009年製作の映画)
4.5
大人への階段を登る。代償として失う物も。
ただし成熟した大人の世界に浸ったからこそ見えてくる世界もある。
原題“An Education”の通り、人生の楽しさもほろ苦さも教えてくれる映画。
英国アカデミー賞主演女優賞のキャリー・マリガンの繊細な演技は観る者の心を掴む。

いやぁ不意にとんでもない傑作に出合ってしまいましたわ!
キャリー・マリガン主演『プロミシング・ヤング・ウーマン』鑑賞にあたり、彼女の主演作を観ておこうと本作をセレクト。
選んだ意図としては17歳という設定(撮影時は23〜24歳だけど)の彼女と30代も後半に差し掛かった彼女の演技にどのような違いがあるのを楽しみたかったからです。

ただですね、この頃からキャリー・マリガンの演技は完成されすぎてます。
なんというか若手ならではのあどけなさや拙さが見えないんですよ。これは凄いなと。
もちろん17歳の大学受験を控えた高校生の役ということもあり、役としてのあどけなさや世間知らずなところは出てるんですけどね。

まぁ今回のアカデミー賞では『ノマドランド』のフランシス・マクドーマンドが女優賞を受賞しましたけど、マクドーマンドがいなければマリガンが獲っていても不思議じゃなかったなと思わせる天才っぷりでした。
もちろん『プロミシング〜』を観ないことにはその辺りの評価は出せませんが、それぐらいのポテンシャルを感じたということですね。

さて、映画の方に話を移しますと、私の琴線に触れまくった最高な作品だったわけですが、マリガン演じる主役のジェニーだけの成長を描いているわけじゃないというのがミソです。
結構厳しい父親といつも娘の味方をしてくれる優しい母親の3人家族。ジェニーが一回りも離れた年上男性に恋することで酸いも甘いも経験して成長していく話ですが、一緒に家族で成長していくんですよね。

特にアルフレッド・モリーナ演じる父親のジャックがなかなかに価値観が前時代的な人で。まぁ物語の舞台が1961年ということで、世の中の大半はこんな父親だったのかもしれません。
ただ娘ジェニーの考えを縛り付けるし、自分の思った通りに教育しないと不満が溜まったり、怒鳴ったりもするしで、まぁそんな父親なわけですよ。
だから、作品の中ではある意味悪役的立ち位置なんです。

そこで登場するのがピーター・サーズガード演じるデイヴィッドという粋な紳士。
年齢も娘よりも親たちと近いこともあり、会話でも常にアドバンテージを取り、ジャックを手玉に取るわけです。
デイヴィッドと父ジャックの初対面のシーンは爆笑してしまいました。

シュールながらイギリスらしい小粋なセリフ回しで楽しませてくれるわけですが、後半になるにつれ展開が一変するんですね。
今まで娘の意見を縛り付ける父親像だったジャックも徐々に変わっていくんですよ。
もうね、ラストシーンが最高です。演出した監督も素晴らしいですが、マリガンのセリフで説明せずに表情でこちらに悟らせる演技は素晴らしいのひと言でした!

まぁでもサーズガード演じるデイヴィッドの紳士っぷりと余裕ある大人の態度は、いくら年の差があっても惚れてしまうのは仕方ないのかなと思ってしまいました。
あれはズルいですよ!かっこいいですよ。

ということでめちゃくちゃ気に入ったのでBlu-ray買うことを決めました。

※2021年自宅鑑賞147本目
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