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翼のない天使の一人旅のレビュー・感想・評価

翼のない天使(1998年製作の映画)
4.0
M・ナイト・シャマラン監督作。

大好きだったおじいちゃんを亡くした少年・ジョシュアの日常と心の成長を描いたドラマ。
『シックス・センス』で世界的にブレイクする前のシャマラン監督が撮った作品で、小品だが感動的なヒューマンドラマの佳作だ。
おじいちゃんのいない悲しみ。おじいちゃんの部屋着を着て、おじいちゃんのイスに座り、おじいちゃん愛用のパイプを咥えるジョシュア。ジョシュアはおじいちゃんの死を受け入れることができない。身近な人の死に人生で初めて向き合うジョシュア。死ぬ直前、教会で神に祈りを捧げるおじいちゃんの光景が目に焼き付いているジョシュアの心に浮かんだ一つの疑問“神様はいるの?”。ジョシュアの神様を探す旅が始まるのだ。
死に向き合い、やがて受け入れていくジョシュアの姿が感動的だ。それと同時にジョシュアは信仰心にも目覚めていく。寝ぼけた表情で飄飄と日々を送っていたジョシュアの行動にも変化が訪れていくのだ。精神的に成長していくジョシュアの姿は凛としていて頼もしい。そんなジョシュアの変化を優しく見守る両親の姿も印象的である。
予想以上に宗教色の濃い作品だったが、ジョシュアの繊細な心の機微を捉えたシャマラン監督の演出が素晴らしい。神様の気配をさり気なく匂わせつつ、その存在を明白に見せる場面では堰を切ったかのように感動的な音楽と演出でしっかり盛り上げていく。不覚にも泣きそうになった。
そして、ジョシュアの頭にフラッシュバックするように挟み込まれるおじいちゃんとの大切な思い出。応援してくれるおじいちゃんのために徒競走で一番になろうと必死に走るジョシュアの健気な姿や、家の前でおじいちゃんとジョシュアがそっと手を繋ぐ何気ないシーンも印象に残る。
おじいちゃんを演じた名脇役ロバート・ロジアの存在感も大きい。決して優しい顔立ちではない(一時期ロバート・デュヴァルとの見分けがつかなかった)が、ジョシュアを見守る時は見守り、手を差し伸べる時は差し伸べる孫想いの優しさに満ちたおじいちゃん役を好演している。死を恐れ、俯きながら十字架を握りしめる弱々しい姿も印象的だった。調べてみたら、ロバート・ロジアは2015年12月に85歳でお亡くなりになっている。寂しい限りだ。
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