健気な妻リンダ(ナスターシャ)は冷めた夫婦生活に孤独を覚えた女社長。精神科医の夫フィルは妻に関心なく、リンダはフィルの浮気を疑っている。そんなとき、ショーンという若者が現れる。ショーンは色々と訳ありで精神病院から出て来たばかりだが、ひょんなきっかけから、経歴を偽りリンダの会社で秘書として働き始めることになった。それから、ショーンは…。
かなりB級な風合いのサイコサスペンス•スリラー。しかし、安定した低空飛行から突如として急浮上するような異様な展開は、本作の低調な印象を眩ませるほどの劇薬であった…。
ショーン役の俳優ジョシュ•ホロウェイがサイコパスを演じているが、俗に言うサイコパス像とは似ても似つかぬ、どうにも間抜けで胡散臭いイケメンがスマートを気取っている感が強くて、単なる危険なストーカー然とした残念キャラではあったのだが、それはそれで恐怖であり、彼なりの一生懸命な姿には好感を抱いた。(メモ:ダビドフのモデルしてた男前のあの人)
女優陣のナスターシャ•キンスキーと初見のハドソン•レイクは眼福モノの美女だけど、気合いの入ったショーンに追い詰められてるのに、どこか淡白な芝居が目立ち、いまいち 場や気分が盛り上がらない。
あくまで予定調和な展開から、ナスターシャのエッチなシーンが本作のハイライトであろうと見切りをつけて、寝転んで鼻でもほじりつつ完走を目指して眺めていたけど、クライマックス目前で、突如、予想外に「おいおい…嘘だろ…?なんだこりゃ…どうなってんだよ!?」という急展開になり起き上がる。
予定調和が吹き飛ぶ めちゃくちゃな展開に、こちらもテンションが急上昇していく。ここへ来て今更、先が全く読めなくなり笑、まさかの、伏線回収だと!?ここまで意欲的な映画であったのかと驚かされる。出来、不出来、繊細さや、緻密さ、クオリティなど、ここではどうでもいい、そう思った。
そして最後のわちゃわちゃシーンはもはや聖なる笑神が降臨している。もう…何だろう…訳わかんないし…目の前の光景にただハイになるほかなかった笑。これを至って真面目なサスペンス映画のトーンでやられたら、下手なコメディよりずっと可笑しいではないか。変態だよ…。
ある人には、失笑ものの取るに足らない駄作であるかもしれない。またある人には、奇妙な光を放ったB級サスペンスの珍品としてフックをくらう映画であろう。〝サスペンス〟というジャンルの筋道から与えられる種類ではない、〝サイキック〟で〝サイケデリック〟な余韻。
この独特な〝滑稽〟さは癖になる。それは第一線のクリエイターが意図してもなし得ない類の〝純度の高い滑稽〟さであり、そこに見出せる〝愛〟というものは、やはり特別なものに成りうるというわけか。。これだから油断できない。
邦題『エクスタシー•ワンス•モア 愛をもう一度』。原題『Cold Heart』からどうすればそうなるのか鑑賞後もよく分からないけど、瞼の裏にフェイバリットシーンを描くと、何だかタイトルも含めて込み上げてくるものがある。笑