このレビューはネタバレを含みます
登場人物の行動にツッコミだらけだったり、ワープかよ!っていう移動範囲だったり、偶然の遭遇の多さだったり、そんな矛盾点の多さは織り込み済み。伊野尾くんと真剣佑に揺れる乙女心。笑えて泣ける(?)ラブストーリーになっていればそれでいいのです。
がしかし。この作品、ひと山いくらのスイーツ映画と切り捨てることのできないアクの強さを持っている。正直言って、サイコスリラー映画だと思う。
なんてったってさえちゃんとカイリ兄。ヤバい。嫌な奴とかライバルとかじゃない。ドクズ中のクズで、これはドロドロとかそういう問題じゃなく、サイコパスやないかと。前半のレイプ未遂とか詐欺とか人身売買とか、ガチ犯罪すぎていっそ笑えるという…。一時代前の少女漫画らしいというかなんというか。SNSで拡散とか、現代らしさが入ってる分、ますます怖いぞ。
さえちゃん、行動原理がマジで「ももが不幸になるを見るのが嬉しい」だし、その為の手段の選ばなさがガチだし怖すぎる。スタンガン襲撃→ベッド写真→拡散すると脅して真剣佑と別れさせるだもん…。しかもその真相が明かされる場面が完全にスリラー映画の手法。さえちゃんを超える巨悪が出てきて油断したところで、最悪の真相が明かされるという。この場面は正直痺れた。あとさえちゃんクソすぎて笑った。彼女が出てくる時のBGMが完全にサイコパス系なのも面白い。そういえば「花男」でもベッド脅迫展開あったけど、昔の少女漫画ってぶっ飛んでたんだな…。
で、そんなさえちゃんすら利用する、邪悪の中の邪悪なカイリ兄。コイツの悪役ぶりも凄え。金の為に女の子を犠牲にしまくる清々しい程のクズぶり。最後の最後まで反省しないし、「美女と野獣」のガストンクラスの逸材。この2人のインパクトが強すぎて。水上剣星と永野芽郁の吹っ切れたヴィラン振り、良かった。
あとはカイリのエピソードは上手くできてたと思う。チャラそうに見えて優しいカイリというキャラクターを、エピソードの積み重ねで丁寧に見せているのは好感度高い。「桃の木」の三段オチも綺麗だったし。伊野尾慧のウザさが丁度良い感じ。ももの優柔不断ぶりは見てて鼻に付く…が、山本美月が可愛いので良し!さすがに女子高生には見えないんだけど…。真剣佑は可哀想すぎた。不遇にも程があるポジション。でも「やっぱりお前しかいない!」ってももに迫るタイミングと、ラストさえちゃんと仲良くしてる理由がよく分からないぞ。
でも色々嫌だなあて思うところもあり。まずポップな文字が飛び交う演出。少女漫画映画のノリとはいえ、本作は品がない。エンドクレジット以降の演出は嫌いじゃないけど。
音楽があざとくて嫌だぞ蔦谷好位置!蔦谷プロデュースとはいえ、「キミがいる」と「ドラマチック」を使うのは反則感。…ん?「キミがいる」調べたら編曲島田昌典やないか!ますますどうなんだ!「ドラマチック」に関しても、「ハチクロ」のイメージと切り離して使ってるとは思えない。「ハチクロ」が「ピーチガール」と近すぎるし、なんだかなあ。
…あと気になったところ。伊野尾の髪の毛。全力疾走で吹き荒れる伊野尾の髪。雨に濡れる伊野尾の髪。……労って。
そして本仮屋ユイカが急激に熟女化してる。これの五年前には女子高生やっていたとは思えない…。