この第一回作品のころ、私は演劇に熱中していたので、原作もメロドラマの戯曲を選んだ――イングマール・ベルイマン
ベルイマン(当時27歳)の監督デビュー作。1943年に入社した映画会社スヴェンスク・フィルム(SF社)で前年に初脚本「もだえ」(1944)を担当し、好評を得ての監督抜擢だった。
田舎町でピアノを教えながら細々と暮らしている女性インゲボルイの元へ、都会で美容室を経営する女性イェニーが訪ねてくる。金銭的に豊かになったので預けた娘ネリーを返してほしいというのだ。一方、イェニーに付いてきた若い愛人ヤックは18歳の娘ネリーをたぶらかし都会に誘うのだった。。。
デビュー作にして、とても分かりやすく展開もテンポも良い母娘物語。ベルイマン監督の才能を感じる。後の演出に見られる幻想性や難解さはないが、若い愛人ヤックの悪魔的な人物造詣が興味深い。ベルイマン自身の投影とも言われ、複雑な人柄がうかがい知れる。
Filmarksでの鑑賞者マークが現在30しかないことに驚く。後のベルイマン作品を読み解くためには観ておくべき基本の一作。
※映像・構成ともフランスのマルセル・カルネ監督「ジェニーの家」「霧の波止場」(共に1936年)の大きな影響が見られるとの事。