垂直落下式サミング

吸血怪獣ヒルゴンの猛襲の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

吸血怪獣ヒルゴンの猛襲(1959年製作の映画)
3.5
アマゾンプライムで観れる50年代パニックの安物。タイトル通り沼地の怪物ヒルゴンという奴が襲ってくるお話。
肝心な怪物登場シーン。開放的な水辺で抱き合って痴話る男女。女の方は、字幕だと一人称が「あたい」な場末の女で、何故か法被を着ているお祭りガール。男のほうもいいトシこいてちょいオラついているイタいヤンキーっていうお似合いカップル。
ここに女の元夫がやって来て銃を持って脅かしてくるんだけれど、丘の上に立てって命令したのにでぶちんなもんだから見失っちゃったのか、山道を追いかけっこすることになって、沼地に追い詰めところにヒルゴンがやって来て二人を水に引き込んでいく。この一連のシークエンスが、雑っていうか、下手っていうか、非合理っていうか。
ヒルゴンは名前のとおり血を吸う奴だ。男女問わず、巣に連れ帰った人を死ぬギリギリまで血を吸いながら、生かさず殺さず長い時間かけて捕食していく生態であるから、なんかこうエナジードレイン系モンスターらしい背徳を生じさせている。
最後に残る生存者が女だったので、ぐったりしながら拒否する悲痛な悲鳴にも俗悪ないかがわしさを孕んでいるし、怪物が二匹のつがいで行動しているのにも、野性動物みがあり根源的なエロスを感じられた。
犠牲者の遺体が湖から浮き上がってくるところは、異様な不気味さがあってとてもいい。奴らの棲みかは、水辺ではなくて水の中。湖の底の未踏域に人間を脅かす怪物がっ!
休みの日、ご近所にある湖の水面に船を浮かべたり、湖畔で日光浴をしたことはあっても、水底は別世界。よく知る風景の下には、思いもよらないモノが潜んでいるかもよ。ちょっと背筋がゾクッと。こんくらいのゾクゾクさ加減が、世にも奇妙なミステリーゾーンってわけ。
最後の戦いでは、ヒルゴンを相手に若者がナイフと酸素ボンベで立ち向かう。当時の低予算の水中撮影だから、おそらく巨大なガラス張りの水槽に入っている役者をガラス越しに撮ってるので、光とかが反射して見づらいのはご愛嬌。