Masato

カノンのMasatoのレビュー・感想・評価

カノン(1998年製作の映画)
4.0
1人鬱映画祭 第4弾 番外編 鬱ランクD
ギャスパーノエに嵌ったので鑑賞。

カルネの続編で、前作の内容が序盤に説明される。なんとなく見るんだったら本作だけで十分。しっかり見たいならカルネは鑑賞推奨。

ある方のコメントでギャスパーノエは当時のパリの社会問題を暴いたらしいです。
カルネとカノンの間の刑務所暮らしがターニングポイントだと思います。
カルネでは、まだ正常だった主人公が、娘を溺愛しすぎたために傷害事件を起こして全財産を保釈金に使い、すべてを失う。
今まで自分の馬肉屋でなんとかやっていけたのに、突然自分の手で失い、娑婆に出ても気乗りしない女と出て行くハメに。
他の仕事にもありつけず、溺愛していた娘の顔も見れずに主人公は醜い程に利己的になり、歪んだ正義を生み、遂にクズ人間になってしまい、精神が段々と蝕まれていく。
ここらへんの心情は「タクシードライバー」と似ているような感じがしました。
社会や今の自分に対する不平不満に駆られ、犯罪行動などに出向いてしまう。自分の不満を解消するために人を傷つける。

ギャスパーノエだからこのまま終わるのだろうと確信状態でいましたが、思わぬ事態で救いのないような救いのあるような終わり方でした。
いままで絶望や不快しか描かれなかったので、ラストのほんのひと欠片の希望は、ある意味救いなんじゃないかと思いました。

全編通して主人公のおっさんの脳内の独り言がマシンガントークのように炸裂します。
脳内では外見の本性でも表れない奥底の本性が表れる。(と感じた)
自分も主人公同様に、脳内では利己的であると思うし、醜い人間だと思う。
それをこうして映画でここまで表現できるというのは、本当に素晴らしいなと思います。

前作同様に変なカメラワークに効果音。
「劇場を出るなら30秒以内」と出てきたときにはワクワクしました。
その後、口が塞がりませんでした。

どう形容すれば良いかわからない。
Masato

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