Masato

猿の惑星/キングダムのMasatoのレビュー・感想・評価

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)
3.7

シーザートリロジーはルパート・ワイアット監督の完璧なスタートに始まり、その後マット・リーヴス監督が極めて手堅く、それでいて素晴らしい作品に仕上げてハリウッド超大作のなかでも抜きん出たクオリティのシリーズだった。

そんな神シリーズの要素を受け継ぎつつ完全新作となる本作、メイズ・ランナーの監督であるウェス・ボールと聞き半ば不安の気持ちになりつつも、本国では概ね好評だったので安心して鑑賞したが、惜しくも不満は色々と残る完全新作であった。

145分と長尺のわりに冗長で締まりのない作りで、面白い要素もその締りのなさに埋もれてしまっていて勿体ない。そのうえテーマが完結しない消化不良気味な物語。プロキシマスシーザーの悪役としての存在感が他のエピソードに時間を割いているせいで疎かになり、今の人類の置かれた立場を描きたいのか、エイプたちの物語を描きたいのかで軸がぐらついているように思えた。

人類の存在は上手く描かれているように感じた。人類は決して諦めないという生存本能の強さを描きつつも、相変わらず傲慢で自分勝手で往生際の悪い存在であることを描いていて良かった。しかし同時にエイプたちも驕りを見せれば例外なく人間と同じ末路を辿る。プロキシマスシーザーが手に負えないであろう人間の技術を求める姿は、創世記でウイルスを作り手に負えなくなった人間たちを彷彿とさせる。また新世紀のシーザーの言葉で「エイプは人間よりも優れていると思っていたが、エイプも人間と同じ」というのを彷彿とさせる物語ではあった。

本作を見るのは人間なので公平さはありつつもエイプ側に寄り添った物語で良い。テーマが完結していないので今後どのような物語になるかは分からないが、「人類とエイプは共存できるのか」というのが大きなテーマとなっていくだろう。

人間の存在が下等生物にまで落ちた世界で、過去の人間の遺産を知っていく物語はゲーム「Horizon」のようで面白かった。またシーザートリロジーが好きなら嬉しくなるような小ネタがいくつか存在し、シーザーという存在の偉大さを描く要素としてのファンサービスがいくつかあって良かった。

WETAデジタルによるVFXは相変わらず素晴らしかった。エイプたちを如何にリアルに肉薄した形でドラマチックにスペクタクルに表現できるかが重要で、それをシーザートリロジーからやってのけた訳だが、今回はいままでほど十分に活かされてはいなかったものの、やはり流石のクオリティ。
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