似太郎

不安は魂を食いつくす/不安と魂の似太郎のレビュー・感想・評価

5.0
ファスビンダー映画の中でも不条理度、悲惨さに於いて頂点を成す傑作。巨匠ダグラス・サークの『天はすべて許し給う』の裏テーマをとことん突き詰め、最後まで報われないラブストーリーに仕上げた手腕はさすが。

元ナチスの清掃婦のおばさんとイスラム人との悲しい恋物語。絶対に成立する筈のない二人の愛の行方は…???

とにかく周囲の家族や友人達から疎まれる清掃婦のおばさんが迫真の名演技を披露している。そこまでやるか!?と言うほど二人を絶望のどん底まで突き落とす、正しくファスビンダー様様といった感じの映画になっている。

廃れた酒場の造形やカラフルな色彩、端正な画角と、人工的かつ無機質な映像世界が繰り広げられる。あゝ無情。この世の「ロマンチック」を根こそぎ取り払ったような殺伐とした風景に何らかの「美」を見つけたり。アンチ・ロマン&アンチ・ヒューマニズムを極端にまで拡大させたファスビンダーによる超絶絵巻。
似太郎

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