あ

不安は魂を食いつくす/不安と魂のあのレビュー・感想・評価

3.9
ファスビンダー作品も五作目くらいに入ってくると、お馴染みの役者さんが分かってきて別の楽しみ方もできます。本当どの役者さんも全くと言っていいほど変な顔をしていますが、どなたの顔も一度見たら忘れられません。もちろんファスビンダー自身も笑。この監督は映画的に映える顔を選ぶのが上手いなと思いました。まあそんなことはどうでもいいですが。

限られたロケーションに一筋縄では行かない物語を閉じ込めるファスビンダーには流石と言う他ありません。今作は扉によって区切られた空っぽの部屋の中に、ポツンと一人二人の人を置いただけなのに、溢れんばかりの孤独を感じるシーンが沢山ありました。

それにしてもファスビンダーは、不幸のみならず幸せの厳しさも描きますが、それに耐えろとマッチョに言い張るのではなく、静かに抱き寄せるところが魅力的ですよね...。具体的な解決を見せないが、最後の画面からは哀れみが溢れているのがその証拠です。今作の場合はそれが病院でアリを眺めるエミの目線でした。この監督は、薬中で死んでる時点でまともではないかも知れませんが、どうしようもなくダメだけれど、誰よりも痛みを知っているんだと思わされる。それこそがファスビンダーなのかと思いました。

強いて言うならば、ファスビンダーは淡々とし過ぎているので、個人的にはシュミットのとち狂った演出がいい味出している「天使の影」の方が好みでした。評価は逆なので、正直人によると思いますが。

ただ、どう転んでもピンクの服を着た女とは寝ないアリ...。本当に好みじゃなかったんですね笑
「チ○ポ故障だ」アリが女に放ったこのセリフが全てを語っています。
あ