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仕組まれた罠のこたつムービーのレビュー・感想・評価

仕組まれた罠(1954年製作の映画)
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「復讐は俺に任せろ」から1年、グレンフォードとグロリアグレアムを再登壇させたフリッツラング作品。「劇団フリッツラング」第二弾だ!

くそー。そんな同じ配役を知ってしまえば確認したくなるのが人情だ。前作(復讐〜)が刺さってない上、主演のグレンフォードに「大根クソ役者」の烙印を押したオレとして大変気が進まぬ!笑 進まないがグレンフォード、貴様にチャンスを与えてやる!

オレを楽しませろ!

今回も大根なら承知せんぞ!それもプライムじゃあナイ! レンタルだ!(笑)
前作も今作もレンタルだぞグレンフォード貴様このやろう!・・というテンションでガン見!



わるくない・・



わるくないぽ。・・振り上げた拳をおろす。笑
エミールゾラ原作とのことだが、まず物語がモダンで良い。グロリアグレアムは相変わらず良く、この人を使いたくなるラングの気持ちがよくわかる。彼女はハイアベレージだ。
(後々彼女はオスカーホルダーと知る。どうりでね。実はその夫役ブロデリッククロフォードも「オールザキングスメン」でオスカー獲得俳優。実はレベル高い布陣だ)

グレンフォードの演技力はストーキングするように追って確認してたが(笑)、まあ、いいかって感じ。途中から諦めた。それこそクラシックな当時代性に身を置いて物語を楽しむの巻。

しかし。役の面でこのグレンフォードとグレアムの最初の「チュー」はどうだ? アノ描写だと「ただ単に好きもんの男」にしか見えねえ。致命的なプロットミス・人物設定ミスに思うが観た人どうだろう?

肝心のストーリーは最終局面が味わいだ。
グレアムの「人を殺すほど愛したのはあの人だけなのね」という台詞に「君は自分のことしか考えていない」と返す。

ここね。

他のレビューでも現代的差違として「ブレる」のがここ。グレアムが可哀想、それもわかる。

しかしここで戦争のこともちゃんと言ってるね「オレが戦ったのは軍服や敵だ」と。人殺しと一緒にするな、と彼は言うんだね。つまりこの映画では不貞不倫よりもなによりも殺人はダメだと至極真っ当な帰結を示している。

故にこの映画は錯綜する。ブレる。
力学とプロットミスから、宿命的に、ブレる。

主人公が貫通した行動を示さないから。表面上で言えば「失敗作」だ。が、だからこそ現代的な作品だな、とオレは感じたよ。

つまり「いい話げ」にラスト気持ちよく風に吹かれるグレンフォードだが、果たして奴はいい主人公だったか? この映画最大のポイントだ。
その同線上にグレアムと旦那の修羅場を掛け、ラストショットはそれでも走る電車の画だ。

これをどう見るか、どう感じるか、オープンエンドを選択している。
オレにはまさに「当時の」混乱こそが見える。三人とも駄目だからだ。電車とは人生の直喩であり味わい深い。

それにもっと深読みすればーー。

この映画の混乱は「朝鮮戦争の復員兵」という設定からすでに現れている。朝鮮戦争自体が中途半端な戦争だからだ。タンカースを着た男(グレンフォード=現代の都合いい男)に大義はなく、金と保身ばかり考える内地のおっさん(クロフォード=近代の都合いい男)と女(グレアム=現代の女)三人の物語である、とも言えるのだ。

どこまでラングが意図したか。
しかしそう捉えると味わいはかわる。



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追伸。ストーキングしてわかったこと。
グレンフォードはコリンファレルだなってこと。

・・ってことはコリンファレルも大根と考えているのか?って三段論法が成立しそうだが、そこはお茶を濁しておく。ファンの方あしからずや。