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イングロリアス・バスターズのcinemakinoriのレビュー・感想・評価

4.2



タランティーノが描く痛快戦争映画!?




推し監督の1人、クエンティン・タランティーノ。
同監督作品の中で唯一ずっと観る機会を逃していた作品をここで初見!!
【ジャンゴ】と【デス・プルーフ】の間の作品になるのかな。


実に痛快なナチス批判映画でビックリ。
ユダヤ人の怒りや、やるせ無さを、タランティーノ監督がエンタメとして、そして映画として思いっきり代弁してくれている。

この作品の前に観た【異端の鳥】と時代背景が重なるも、その描き方の違いに“映画”の素晴らしさと懐の深さ、そして大いなる存在意義を痛烈に感じざるを得ない。
どちらも“映画”としての意味を遺憾なく発揮し、且つ対照的な描き方にも拘らず、齎すメッセージの力強さは双方共にお見事。



タランティーノ作品と言えば、意味のない会話劇とグロ描写が十八番と言って良いんだろうけども、本作はその得意技の二つとも、他の同監督作品よりは結構控えめなほうかも?
また、時系列をぐちゃぐちゃにする監督の悪戯な癖も本作は全く排除!
つまり、非常に取っ掛かり易いタランティーノ作品の一つという印象。

得意の会話劇は、全編を通じて存分に有るには有るのだが、今作の見どころはいつもの意味のない会話劇ではなく、言語多用による巧みな心理合戦に於ける非常に緊張と緩和を味わえる会話劇となっている点が、いい意味でタランティーノ色を淡くさせて、より多くのファン層に向けて馴染めるように脚色されていてとってもわかりやすく親しみやすい。



そして、
なんと言ってもクリストフ・ヴァルツ!
【ジャンゴ】でその魅力は既に堪能させて頂いてはいましたが、今作こそ怪演!
見事にブラピも食ってしまう程の存在感アリアリなナチス側の悪役代表を演じ切っていて、めっちゃくちゃ素晴らしい。


とにかくタランティーノにしてはシンプルで非常にわかりやすく話が展開していくので、153分も全く気にならない。
物足りなさと言えば、いつもの爽快なぶっ飛びクライマックスではない点くらいかな。
それでも、きっちり胸スカ展開をぶち込んでくれる辺り、流石はクエンティン・タランティーノさんですわ。


エンタメ(映画)を貫きながらもしっかりとしたカタルシスも感じられる繊細さと、同監督にしては少々控えめな罵詈雑言、抑揚の効いたバイオレンス、古き良き時代の映画愛が詰まった史実を皮肉った娯楽作品として、なかなか密度と深度がハイレベルな作品だったなぁ〜。


タランティーノ作品でもベスト5には入るかな♬
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