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アンディ・ガルシア 沈黙の行方のIDEAお休み中のレビュー・感想・評価

3.4
切なく響くピアノの音。
非常に好みの劇伴に良作であることを確信。
(『ノマドランド』なんかでもそうだったのですが、どこか物悲しく響くピアノの音に弱いのです)

まずは鑑賞の目的であるアンディ・ガルシアのイケオジぶりについて!

あんたの色気はどこからくるんや!
はえーカッコ良い…。
アンディ・ガルシアファンの皆さま必見です!

…と、延々とアンディ・ガルシアの良かったところについて書いても良いのですが、テーマが非常にセンシティブだったので神妙にレビュー書きます。


今作はサスペンスの形式を取っていますが、今作の肝は犯人探しや謎解きではなく、『心の闇を振り払うことの難しさ』ではないかと思います。

サスペンスというより人間ドラマとして観るのが良いだろうと私は感じました。


主人公マイケルの息子カイルは思春期にうつを発症したため、カウンセリングを受ける事となります。
しかし結局、自殺を選んでしまいます。
心理学者のマイケルが息子を失った過去に苦しみながら、息子とどこか重なるとある患者に隠された心の傷、そして息子の死の真実に向き合って行く作品です。

今作、とある描写が原因で日本では劇場未公開となったようです。
(直接的なショッキング描写はありませんのでご安心を)
サスペンス要素は上記の背景が絡んでくるものなのですが、先に申し上げたように今作の重要なテーマはその先にある心の闇です。
『傷を負った心は元通りにはならない』ということです。

昨今では「トラウマ」や「うつ」という言葉を軽いノリで使ったりしますが、笑い話で済むようなことではないということがヒシヒシと伝わってきます。
症状が重い場合は実に長期間向き合わねばならない病です。克服は容易ではありません。
患った人間にしかわからない闇の世界があるのです。


心はガラス製のグラス。
一度砕けてしまえば完全には元通りになりません。
薬という接着剤で形だけ取り繕っても塞げない穴があり、埋められない欠けが残ります。

壊れたグラスから溢れてしまう水《感情》を必死に手当てしながら生きねばなりません。
本人にとっても家族にとっても非常に険しい道のりとなります。

そういった苦しみを抱える本人、そして接し方に苦慮する家族が上手く描かれていたように感じました。
カイルの死後、残された家族の有り様も含めて。

テーマは重く、決して万人受けはしない作品ですが、個人的には観て損はしない作品でありました。
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